映画「ある日どこかで」
マイベスト映画
医師の仕事はすなわち人間を知ること、と思っています。自分の前にいる患者さんは何を求めて来院されたのかを一方的な質問だけではなく、表情やしぐさ、話し方から類推しなければなりません。その人を知るように努めなければ、良好な医師患者関係は築けないと考えています。そのためには、読書をしたり、人と語ったり、自分を見つめ直したり。映画を観ることも重要なことと考えています。
映画を観なければと思う気持ちは強いのですが、日常生活の中で2時間以上の時間を空けるのは容易ではありません。今週たまたま夜に時間が空いたので、wowwowでケイト・ウィンスレット(映画「タイタニック」のヒロインだった方です)主演の「愛を読むひと」を観ました。一言で言うとラブストーリーなのですが、ナチズムや宗教的な背景があり、僕自身はすっと映画に入り込めませんでした。
自分が最も好きな映画の一つであり、自分にとって最も切ないラブストーリーは「ある日どこかで」という映画です。少し前に亡くなったクリストファー・リーブ(映画「スーパーマン」のクラークケント役の俳優です)が主演の知る人ぞ知る映画です。映画好きな高校からの友人に教えてもらったのが大学生の時でした。ダビングしてもらったVHSテープを何度か観ようとしたのですが、序章の部分が間延びした印象があり、何度も途中断念し放置していました。それがある時、時間を持て余したので、前回よりももう少し前に進めれば、という程度の気分で見出したところ、徐々に引き込まれて行き最後には放心状態、涙が止まりませんでした。と同時に、「こんな名作をなぜ、もっと早く観なかったのだろう。」と自責の念にかられました。1980年の映画なのでもちろんCGなどなく、決してお金をかけた映画という感じでもなく、いわゆるB級に属する映画なのですが、これ以降「ある日どこかで」が自分の中のラブストーリーのスタンダード作品になりました。
僕は人に言える程の映画通ではないので、脚本がどうとか、演出がどうとか、映像がどうとか、の評価は出来ません。自分のベスト映画なので、それらはもちろんいいのでしょう。この映画の何が一番印象的だったかと言えば、何よりも音楽です。随所随所で使われるラフマニノフの「パガニーニの主題による変奏曲」、何よりもジョン・バリーの曲がとても印象的です。映画音楽を聴いているだけで、今どんなシーンか理解できますし、テーマ曲を聴くだけでとても切ない、やるせない気分になってきます。
映画は総合芸術であること、ハリウッドの超大作だけが映画ではないこと、まだまだ自分の知らない名作がたくさん埋もれていること、を教えてくれた映画の一つを紹介させていただきました。機会があればぜひ観てみて下さい。