煙草と酒と食道がん
やしきたかじんさんの訃報に思う
この国の報道番組は、国営放送も含めて中立的立場をとるとしながらも、どちらかというと左に傾いていて、しかも中国・韓国よりと感じているのは僕だけだろうか。保守というと、右寄りとか国粋主義というイメージを抱きがちだが、僕はそう思っていない。政治の場においては、まさにこの国の安全を保ち守るための政治概念だと考えている。リベラルを謳う民主党が政権を取ってこの国はどうなっただろう。マニュフェストは絵に描いた餅、経済は疲弊し、周辺諸国からなめられ、大災害時の対応は後手後手だった。先の衆院選・参院選の結果が、民主党政権への評価を如実に表している。
テレビ番組「たかじんのそこまで言って委員会」は、政治経済を主に扱う唯一無二と言っていいほど保守色の強い番組である。「たかじん」と看板をあげるだけあって、本音・歯に衣着せぬ・辛口、時には毒舌ともとれる意見を、斯界の論客が丁々発止でやり合う番組である。俺が俺がの我の強い出演者達の討論形式番組なので、収拾がつかなくなることはしょっちゅうだが、そこは司会者やしきたかじんの腕の見せどころである。散慢、中途半端になりがちな討論番組をうまくまとめあげる。日曜の午後、用事がない限りは極力視聴するようにしている。僕の周りでも見ている人の多い人気番組である。
年明け早々、やしきたかじんさんの訃報が伝えられた。早期食道癌で手術、その後の一次復帰、復帰による極度の過労心労、このためのしばらくの静養と聞いていたので、その死にはびっくりした。この経過から考えると、手術の時点で病状が思っていた以上に進行していたのかもしれない。
本拠地であるここ関西では、追悼特集・追悼番組が死後、度々放送されている。コメンテーターや縁ある芸能人が、故人との思い出、故人のエピソード、暴露話を披露して故人を偲ぶとともに、皆が一様に「強面だったけれども優しかった」「惜しい人を亡くした」と早すぎる死を惜しんだ。僕も本当にそう思う。そう思うが、立場上、もう一言付け加えてもらえたらと感じている。
たかじんさんが、酒と煙草をこよなく愛したことは周知の事実である。一方、飲酒と食道癌、煙草と食道癌の因果関係もよく知られるところである。その両方を嗜む場合、飲まない吸わない人に比べて10倍のリスクがあると言われている。
当院でも、進行した食道癌患者さんを年に数人診断する。ある程度告知しなければ高次病院へ紹介しづらい昨今、告知すると、付き添ってきた奥さんは「だから、酒・煙草は止めってあれだけ言ってたのに、何で私の言うことを聞いてくれへんかったん。」と呆然自失の本人をなじって、その場が険悪な雰囲気になることがある。芸能人は、芸と同様私生活も破天荒、型破り、天衣無縫と賞賛を浴びるが、我々市井人は自業自得、因果応報と蔑まれる。
だからこそコメンテーターには、死を惜しむ一方、ぜひとも「煙草は止めましょう、お酒はほどほどに。」と付け加えていただきたいものである。
「飲む打つ買う」という言葉がある。男の道楽の象徴であるが、酒を飲めば直ぐに顔が赤くなって眠くなり、パチンコさえも打てない、買う楽しみはシーズンのヨウジヤマモトの服だけ、というようなせこい僕が亡くなっても惜しんでくれる人はいない。だから、細く長くこの世に居座ってやろうと思っている。