コロナショックに明るい兆し
当院では、毎月の内視鏡検査件数を公表している。ホームページを開設するにあたり、他院のものをいくつか参考にさせてもらった。その一つが月々の検査件数を公開していた。内視鏡医として院長の矜持を感じた。同時に、「患者として訪れる際の参考になり安心につながるなあ。」と直感した。開院してまもなくだったため決して多い検査数ではなかったが、つまびらかにすることを決めた。何よりも、参考にさせていただいた医院に追いつき追い越せるよう自身を鼓舞することにした。ほどなくして追い越し、その後も右肩上がりに検査数は増えた。ホームページをリニューアルするにあたり、平成二十七年以降、年ごとの検査数も表示することにした。ここ五年ほどは年間三千件以上で推移していた。
今年になって明らかになった新型コロナウイルス感染症、かつての新型インフルエンザの件もあり、「新型と言ってもインフルエンザに毛の生えたくらいのもんやろ、大層なことにはなるまい。」と僕は高をくくっていた。しかし、みるみるうちに感染は拡大し、六月上旬で全世界の感染者数は642万、死亡者数は38.3万人ととどまるところを知らない。世界経済の損失は940兆円とも言われているが、あまりにも天文学的数字でピンと来ない。僕の周囲でも「大変だ、大変だ。」という言葉はよく聞く。常軌を逸している状況にあることは間違いないが、どれほど深刻なのか客観的な数字が分からないので正直なところ共感しづらい。
当クリニックの状況は、いみじくも検査件数が顕すことになった。四月と五月の検査件数は、対前年度比約半減となってしまった。内視鏡検査が主体のクリニックなので、それはつまり診療報酬(売上)が半減したことを意味する。右肩上がりの成長期には、人員を増やし経費の有効活用を積極的に行ってきた。安定期にある現在、今回のような事態が起こると肥大化した人件費や経費が何とも痛い。職員は、基本的に常勤なので解雇させることが出来ない。家庭を持ったパートタイマーに「暇やから休んで!」とも言えない。渡りに船で、一人が退職を願い出た。介護施設も併設している医療法人なので、人手が手薄な介護事業所の兼務をさせて人材の有効利用も始めた。
不要不急ではないはずの診療所でこの状況なので、飲食を始めとしたサービス業は壊滅的な打撃を受けたに違いない。コロナ後やウィズコロナなどの言葉も聞かれるが、医療従事者として僕は意に介していない。ワクチンと治療薬、簡易診断キットが開発されれば、数年後にはきっと「令和二年はコロナが流行ったな。」と思い出されるに違いない。今回の感染症は、確かに甚大な被害を及ぼした。けれども、地震や台風といった自然災害と異なり、建物や設備、インフラに被害が及んだ訳ではない。もちろん、リーマンショック時のように金融機関が破綻した訳でもない。経済活動の制限によりもたらされたもので、その活動が徐々に戻れば萎んだ景気も元に戻るのは早いと考えている。これを機に株に手を出そうと目論んでいたところ、株価は急激に上昇して足を踏み込めずにいる。投資の賛否をするつもりはないが、景気の指標としての株価は、既にコロナ後を織り込んでいるように思うのは僕だけだろうか。