緊急事態宣言下の東京
昨年のゴールデンウィークは、全国的に緊急事態宣言が発出されていたため自宅に巣ごもり状態だった。薫風心地良い五月晴れに何処にも行けない。プールにも泳ぎに行けない。昼ビールに録り貯めていたドラマを視聴するだけの自堕落な日々であった。あれから一年、今年もゴールデンウィークがやってきた。いみじくも、4月25日から東京と京阪神に三度目の緊急事態宣言が発令されていた。あれから一年、我々は多くのことを経験し学んできたはずだ。何が何でも自粛の風潮に自分なりに一石を投じたいと考えていた。行ってみたいと思うイベントがちょうど東京で開催されていた。担当者から「ぜひとも案内させてください。」と招待されていた。
そのエキシビションとは、3月19日から5月16日まで原宿のJINGで開催されていた「LOUIS VITTON &」展である。三年前、阪急うめだ本店で開催された「TIME CAPSULE」展を奇遇にも見て、このブランドの歴史と先進性に感銘を受けた。それまで、このブランドの莫大な広告費を用いたマーケティングとイメージ戦略に対して、正直なところ嫌悪感を抱いていた。以降、全面否定からライフスタイルの一部に取り入れてみることにした。案外抵抗はなく、むしろヨウジヤマモト信者であることの窮屈さを弛緩させてくれたような気さえする。前回の展示会は自身の歴史をたどるものだったが、今回はアーティスト達との、特に日本人とのコラボーレーションに重点が置かれていた。日本人として興味があったし、前回の反抗的参加から、「友好的にこのブランドを改めて眺めたい!」とも感じていた。緊急事態宣言発出により開館時間が縮小され、おそらく入館人数も更に制限されたに違いない。担当者に連絡したところ、入館は問題ないとのことだった。飛行機も割引価格で購入できそう、ホテルも部屋食付きプランを通常よりも割安で予約できそうだった。「そうだ、東京に行こう!」、思い切って上京することにした。
5月3日、待ち合わせ時間まで余裕があった。羽田空港から久しぶりに公共交通機関を用いて原宿駅に向かった。羽田空港はもちろんのこと、モノレールから山手線も閑散としていた。しかし、原宿駅に降りてびっくり、竹下通りは人通りが多かった。JINGまでの道すがらも結構人がいる。イベント観覧を終え、担当者の粋な計らいで新装された銀座並木通り店も案内してもらった。道中の表参道は人波で溢れていた。銀座も、テレビニュースで見るより遥かに人手が多い。この地に住んでいると、「大阪、怖い。」、「東京は危ない。」なんて声をよく聞くが、現地に行ってみると思いのほか住人は普通の生活を送っている。それはそうだ、コロナ禍から一年、同じことの繰り返しに、「仏の顔も三度まで」といった国民の気分がこの人流の多さを物語っているように思えた。予約していた渋谷のホテルにチェックイン後は、流石にこのご時世である、コンビニでたんまりとお酒を買って部屋飲みでこもるほかない。
翌日が困った。時間をつぶすために好都合だろうと渋谷駅近辺のホテルを選択したが、百貨店も大規模映画館も休業している。行きたいと思っていたショップも事前予約制で当日予約は不可である。「東京に行けば、どうにかなる。」とたかをくくっていたが、昨日とは打って変わって緊急事態宣言下の東京の現状を目の当たりにした。仕方がなく駅近辺を小一時間ほど当てどなくぶらついたが、駅付近の人の多さ、特に渋谷スクランブル交差点の賑わいには驚嘆した。今や、コロナによる不安よりも、コロナ疲れもしくはコロナ慣れが逆に蔓延しているように思えた。