ある二人の生き方(若者編)
例年と異なる年末年始には、例年と異なる思いがけない再会があった。世代が全く異なる二人の生き様を知って、感銘を受けるとともに複雑な気持ちも抱いた。もし自分が彼らと同じような境遇・立場に置かれたらどう振る舞っただろう、年始から思いが錯綜した。
一人は妻の甥っ子である。彼は、教職を目指して地方の国立大学の教育学部に入学した。彼と最後に会ったのは大学に入学する頃だったので、9年ぶりくらいになるだろうか。教職を目指していたが、先ずは一般常識を身につけたいと地方銀行に入行したと伝え聞いていた。医師・教師・裁判官は三大非常識職業と揶揄されるくらいなので、彼の寄り道には感心したものである。ところが少し前に突如として、TikTok関連でTVに出ている、映像関係の会社に転職した等、想定外の展開を聞かされた。その方面には疎いので良く分からなかったが、どうも、彼は280万のフォロワーを持つTikTokクリエイターになっていたようだ。線が細くおとなしい印象だったが、久し振りに見た彼は、見るからに立派なクリエイターになっていた。しかも独立したばかりで、最早僕と同じ経営者という土俵に上がっていた。
表現の世界と言っても正直、有名どころ以外は玉石混淆状態である。その世界で生きていくための方法論や信念・哲学があるのか問うてみた。彼はきっぱりと頷き、独自の手法を身につけ誰にも負けないと語った。矢継ぎ早に、独立したからには何人雇用しているか聞いてみた。すると、正規雇用はゼロとのこと。案件によって求められる内容が異なり、その都度チームを編成して仕事が終われば解散、正社員を雇う必要がないそうだ。聞きたいことは山ほどある。クリエイティブな仕事をするなら東京がいいのではと尋ねてみた。すると、現時点では上京するメリットがなく、慣れ親しんだ福岡をしばらく拠点にするようだ。SNSにおいて、TikTokがいつまでも優位性を保てるかどうか不安じゃないか指摘したところ、メタ(バース)を含めて次の展開も考えているとのこと。幼い頃の彼の印象は完全に払拭された。主義主張なく田舎で安穏と暮らしている中年男には、何とも興味深く刺激的な内容だった。
甥っ子は、学生時代から写真や映像を趣味にしていたそうだ。子供の頃を知る限り、芸術家肌を伺わせるところはなかったように思う。おそらく「好きこそものの上手なれ」で、誰よりも真摯に熱心に取り組んだのだろう。その結果として、趣味を仕事にすることが出来たに違いない。彼と違って、僕は親の背中を見て何も考えることもなく内視鏡医を目指した。所詮、僕は父のフォロワーに過ぎない。甥っ子は、280万のフォロワーという目に見える結果を残している。父と同じように地域医療に貢献したいと願った僕だが、本当に貢献できているか確信を持てないでいる。率直に彼の生き方には感服せざるを得ない。今後、彼の人生には多くの困難が待ち受けていることは想像に難くない。しかし、それ以上の飛躍や興隆を期待できるのも確かである。若さを羨むとともに、下るだけの自分の人生を憂いている。