久しぶりの家族旅行(別府に行こう!)
医師になってから10年目まで各地を転々とした。道内は、旭川4年、釧路1年、岩内2年。その後、医局の推薦もあり「これから頑張るぞ!」と意気込んで上京した。しかし、父が病に倒れ半年で実家に返ってくることになった。この間、釧路を除いて父は必ず僕の赴任地に赴いてくれた。当時はあまり意識しなかったが、逆の立場になってようやくその気持ちが理解出来た。今年の黄金週間は、COVID-19による行動制限のない3年ぶりの長期休暇となった。さてどうしよう、思案の末、「そうだ、久しぶりに家族旅行に行こう!」となった。父が僕にしてくれたように、行く先は、今春から社会人になった長男が住む大分県別府に決めた。
大分県は今回で3度目になる。いつもなら大阪からフェリーに乗って大分に向かうところだが、現地に2泊しようと思えば船中2泊の計4泊しなければならない。今回の主たる目的は、長男が住むマンションを見て不足品を補充することと三男が喜ぶ杉乃井ホテルである。子供達が小さい頃よく遊んでいたプラレールの特急ソニックにも実際に乗ってみたかった。混雑が予想されたが、今回は敢えてJRを利用することにした。初日は移動と素泊り、二日目は杉乃井に家族全員集合の段取りを組んだ。初日の夜は長男と食事をすることに、ついては勤務する病院の先輩におすすめの夕食処を教えてもらい妻が電話した。「予約の電話入ったで。」、「その日、私用事あるから遅れるわよ。」と携帯電話の向こうから聞こえてくる。何とも妙な応対である。ネットで調べても要領を得ないコメントが多く、「大丈夫か?」心配になった。
乗り継いで約6時間半、5月2日の夕刻別府に到着した。特急くろしおを除いて車中は予想通り混雑していた。予約していたホテルもチェックイン時に混雑していて、スタッフ曰くその日はほぼ満室状態だった。ウィズ・コロナが浸透しつつあることを実感した。長男とホテルで待ち合わせ、目的の居酒屋に徒歩で向かった。小洒落た居酒屋を横目に辿り着いた先にびっくりした。「しまった、ひょっとしてスナック?」と訝ってしまう店構えなのだ。店内も、かつてのスナックを彷彿させる仕様になっている。我々同様、店主も我々家族を不可解な面持ちで眺めている。「どこに座ってもいいよ。」、通常ならカウンターに座りたいところだが、4名の家族連れであり、何より店内の怪しい雰囲気に飲み込まれてしまった。すかさず奥にある座敷テーブルを選んだ。注文を取りに来た女性(店主の奥さん)が唐突に、「うちのシステム聞いています?その日の美味しい食材で料理を出すのでメニューないんですよ。次々に出してもいいですか?」と問うてきた。この段になって、不安が絶対的な安心に変わった。「素晴らしい!」、いわゆる隠れ家的、知る人ぞ知る、玄人受けする店であることを確信した。