久しぶりの家族旅行(ディープな別府を体験)
付きだしの後は、大分近海の白身魚を中心としたお刺身の盛り合わせ。僕は北海道生まれだが、人生の大半を和歌山で過ごしているもはやチャキチャキの和歌山県人である。来県した客人皆、「さすがに本場和歌山の刺し身は美味しいですね。」と言われる土地の住人である。「赤みのない盛り合わせは刺し身にあらず!」意気込みつつアジに箸をおろし口に含んだ。ギョギョギョ、「(なんな?)めっちゃうまいやん!」思わず口を衝いた。何と醤油が甘いのだ。甘いだけではなく、口の中で和の豊潤な香りが立つ。白身魚の脂身と合わさり絶妙な味わいを呈する。渋い赤ワインを想像して口にしたところ、思いがけなく甘いワインを飲んだ感覚である。しかも、その甘さが単純で不自然でなければ感動もひとしおだ。以後も店主に防戦一方で、新鮮な鳥・豚・牛の肉料理のオンパレードに舌鼓を打った。地酒「智恵美人」との相性も抜群で何種類も飲んでしまった。当初我々だけだった店内は、いつの間にかカウンターが満席になり、問い合わせの電話を何度も断っていた。「春うらら」は忘れがたい小料理屋になった。
翌日の昼は、長男お勧めのエスニック料理だ。温泉地で本場のタイ料理とは摩訶不思議だが、立命館アジア太平洋大学(APU)の存在が大きいらしい。名前の通りアジア太平洋地域からの留学生が多く、学生・職員のために各国の料理店が独自に発展したそうだ。並んで待つことが嫌いな我々家族は11時開店前に一番乗りした。長男に意見を求めながら多種多様なメニューから頼んだ。そうこうするうち、広い店内はあっという間に日本人と東南アジア系の人々でほぼ満席になった。料理はどれもこれもスパイスが効いていて、汗をかきながらヒーヒーフーして食した。カメムシの匂いがするパクチー(あくまでも主観)の香りが抑えられていたためか、タイ現地で食べた料理よりも数段美味しかった。本場の証だろう、食後数時間経って突如お腹がごろごろ言い出した。腸蠕動を更新させるスパイスが効いていたようだ。恐るべしタイ料理「ルアンマイ」。
夕刻は、今回が3度目の杉乃井ホテルだ。初めて訪れた時、数々の温泉と温泉プール、各種イベント、内容の濃いバイキング料理に度肝を抜かれた。さすがに今回感動はなかったけれども、家族が集って過ごすには申し分のない施設だ。コロナ禍により3年間水泳授業がなかった三男が、温泉プールでキャッキャッ満面の笑顔で泳ぐ姿を見て喜びはひとしおだった。また、久しぶりの家族全員集合は、「今度はいつ集まれるのだろうか?」という思いもあり感慨深かった。オンライン飲み会という言葉もある昨今だが、何を話すでも何を語る訳でもなく、同じ時同じ場所に家族皆がいることが重要と心底感じた。長男は当面大分県で研鑽を積むようでおいそれと帰省できないが、家族全員が集まれる環境を整えることが親の責務、それは即ち障害のある三男にとって最大の喜びでもあることを再認識した。翌朝、長男を残して一緒に帰宅の途についた。
今回の旅行で、長男の勤務先と住居を見ることが出来た。引っ越しを機に長男が欲しがっていたものを購入できた。ディープな別府も垣間見ることが出来た。何より、父が僕にしてくれたことをまた一つ実現できた。ドラマ「半沢直樹」の大和田常務のセリフではないが、「施されたら施し返す、恩返しです。」亡き両親に恩返しがまた一つ出来た。僕の人生は、ある意味、両親への恩返しの旅路である。