院長のコラム

いざ、スガラボ・ヴィー(後編)


さあ、いよいよ料理の始まりである。何度も言い訳がましいが、料理に対する知識はゼロ、味覚もゼロ、星の付くような店を訪れたことはほぼゼロ、NAI-NAI 53の男の感想に過ぎないことを理解いただきたい。僕は、多感な二十代前半をバブル景気の中で生きた。バブルの頃は、どの雑誌でもデート特集が組まれ、「○○(のブランド)を着て、ディナーはフレンチでスマートに!」なんて浮かれていた時代である。今と違って、男性は女性におごるのが当然だった。ネットなんてもちろんない。残念ながら僕はほぼ頭でっかちのままに終わってしまったが、いざという時のために情報だけは仕入れておかなければならなかった。なので、フレンチと言えば、バターとクリーム、そして卵黄たっぷりの濃厚なソースと言うイメージがこびり付いていた。

今回、テーブルに置かれていたメニューには、新玉ねぎ、ホタルイカ、菜の花、米、毛ガニ、ごぼう、土佐文旦と書かれていた。したがって産地も、淡路、兵庫香住、京都、北海道白糠、愛媛県宇和島、大阪、高知など多岐にわたっている。要は旬の食材を産地から取り寄せているのだ。アミューズやオードブルは、手づかみや箸を使って食した。新鮮な食材とその持ち味の尊重、そして食事法という観点に立てば、フレンチと言うよりもはや和食といった風情である。とはいえ、そもそもフレンチなので、もちろんソースが使われている。押し出しは強くないけれども複雑で重層的なそれは、食材本来の美味しさの引き立て役に徹していた。どの料理を食べても、伝統的なフレンチと和食の調和を感じずにはいられなかった。僕はフレンチのことをよく知らない。今回経験したものはヌーベルキュイジーヌの範疇に入るものなのだろうか。それとも、師匠が提唱したキュイジーヌモデルヌに相当するのだろうか。何れにしても、ラボ(研究室)で開発された実験的な料理であることに間違いない。

料理とワインのペアリングにも感銘を受けた。こちらは、実験的というよりも挑戦的、いやむしろ挑発的だったように感じた。というのも、選択されたアルコールに日本酒が含まれていたからだ。メニューに書かれていなければ、「芳醇でまろやかコクがあって、しかし日本酒のような新鮮なワインですね。」なんて答えそうな石川産の純米酒が含まれていた。ワインのペアリングと言えば料理を引き立たせる脇役のはずだ。けれども音楽で例えるなら、料理が味わい深いノクターン(夜想曲)なのに、コンチェルト(協奏曲)でなければならないはずのワインがいきなりマーチ(行進曲)なのである。チーズで例えるなら、ブルーチーズのオンパレードなのだ。口に含んだ途端、「えっ!?」と感じる単独でも角が立つ個性的なワインがピックアップされていた。不思議なもので、ソムリエに「(この料理には)これが合います!」と断言されたら案外腑に落ちるものだ。料理とワインの共同作業が、微妙なようで絶妙、もしくは寸止めのチョイス、と僕は感じた。

最後に。今回のコラムを読んでくれている方は、きっと値段を知りたいに違いない。金額のことを語るのは、これ見よがしではばかられるが、一連のコラムを終えるにあたって画竜点睛を欠くような気がするので事実を語ることにする。料理、そして乾杯のシャンパンとペアリングのワインで税込み六万円弱支払った。僕にとっては、血迷ったというか勢いに任せたというか、一世一代の大博打を打ったような気分である。けれども経営者の視点に立てば、料理の内容と質、スタッフのおもてなし、賃料と人件費を考慮すれば妥当だと感じた。五十を超えた僕に残された人生はもう少ない(ように感じている)。頻回に行くことは出来ないけれども、「年に一度くらいはこういうふうなお金の使い方もあるのでは?」と認識を変えることが出来た一大イベントになった。

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