うっせぇわ(新型コロナワクチン接種雑感)
高齢者の新型コロナワクチン接種がどんどんと進み、当地でも60から64歳以下の方にようやく接種券が配布され始めたようだ。65歳以上の高齢者はもちろん、その年代の方からの問い合わせが相次いでいる。当院では、受診歴のある方を優先にさせてもらっているが、受診歴がなくてもワクチン接種の予約受付をしている。開業医の役目として地域医療貢献がある。それは即ち、地域の公衆衛生にも関わることである。専門家として、この現状に対して医師としてどのように取り組むか現在問われている。今回の流行病に対する経済的損失・疾病による逸失賃金の低減・治療に関わる医療費の削減を考えるなら、ワクチン接種が最も効果的な対策と僕は判断している。これはあくまでも社会全体として考えた場合で、ワクチン接種を受けるかどうかはメリットとデメリットを考慮した個々の自由意志である。集団接種の協力はもちろん、出来る限り個別接種をしていきたいと考えている。
高齢者のワクチン接種が全国的に始まった頃、和歌山県が接種率第一位だった。この理由として、和歌山市の人口あたりの開業医数が全国的に最も多いからというものであった。和歌山市医師会の結束力と行動力は讃えられるべきものであるが、この文脈から「もっと開業医数を増やそう!」と短絡的にならないで欲しいと願う。というのも、人口あたりの医師数と医療費の相関関係はよく知られている。医療費がかさむと言うことは即ち、それに比例して無駄な医療費も増えることになる。和歌山市では開業医を中心に積極的にワクチン接種を行っているが、我が田辺市はどうだろうか。残念ながら、消極的・後ろ向きとしかいいようがない。「かかりつけでなくても可」、当院のように「かかりつけ優先」を標榜しているのは旧市内に2診療所しかない。あとはほとんどが「かかりつけのみ」である。この「かかりつけ」の定義が曖昧で、かかりつけ医と思って問い合わせたところ断られた事例が社会問題になっている。当院には、かかりつけ医で断られた、集団接種を申し込んだけれどもいつまで経っても連絡が来ないというワクチン難民が後を絶たない。COVID-19を機に医師会の存在が問われている。何度も言うが、そんな医師会に見切りをつけ十年近く前、僕は市医師会を退会した。所属していたら、現況に対して怒り心頭だったことだろう。
ところで、医療従事者はワクチン接種が優先的に接種されるはずだった。和歌山県では、3月中旬から順次接種が開始されると予告されていた。医師の端くれとして連絡を待っていたが、いつまで経っても来ない。医療従事者の中でも、最前線で頑張っている医療機関や基幹病院が最優先されることは理解していたので気長に待っていた。ところが、同業者の接種日がちらほら決定するのを余所目に一向に連絡が来ない。しびれを切らして、スタッフに保健所に問い合わせてもらっても、現在検討中とのツレナイ返事である。数日後、ブチギレた僕は保健所に直談判した。遺憾の意どころで済むはずもなく激しく抗議した。すると、担当者が説明にあがりたいとなった。「開業医のワクチン接種は医師会に丸投げしていて、所属していない診療所には配慮が足りませんでした。」との返答。「♪正しさとは愚かさとは それが何か見せつけてやる♪」、思わず僕の頭の中でAdoの「うっせぇわ」が鳴った。「医師会に所属していなくても自分なりに地域医療に貢献してやる!」と決意した。正論を述べただけで圧力をかけるつもりは毛頭なかったが、すぐさまクリニックのワクチン接種日が決定した。行政の有り様を垣間見た。