ただでは済まされない〜久しぶりの家族旅行四日目〜
家族旅行三日目の宿泊地は石川の粟津温泉である。二日間を共にしたトヨタ・ボクシーとはJR加賀温泉駅でお別れし、旅館から駅に迎えに来てくれたバスに乗ること十五分、その日泊まる旅館が「のとや」だ。原則、宿泊先選びは僕がする。これだけではなく、家族のことはほぼ自分が決定していると言っても過言ではない。一家の主たることを自負しているからだ。しかし、今回の旅館選びは珍しく妻に任せた。お金を出せばきりがない。しかも今回は大人数である。コスパを考え妻が選んだ旅館は風情が老舗旅館然としていた。調べていないので断言できないが、老舗旅館に違いない。女将自らのお迎え、チェックインの間のおもてなし、いつもとどうも違うのだ。ネットで申し込んだ際、人数六人で温泉付き部屋にチェックしたのが功を奏したのか、VIPルームのような広い部屋に通された。旅館の大浴場で積もり積もった心の汗を拭い去り、部屋付きの小じんまりしたお風呂で一人思わず「ウオオオ!」快哉を叫んだ。合掌造りの広間で夕食までも満喫した。終始気がかりだったことは、「なぜにVIPルーム?」だった。支払いを終え、ネット予約通りの金額だったことに安堵した。きっと、神様からの我々家族に対する思し召しだったのだろう。
八月十三日、久しぶりの家族旅行、最終日。チェックアウト間際まで旅館で寛ぎ、再び旅館バスでJR加賀温泉駅に送ってもらった。サンダーバードに乗るまで一時間弱ある。特急に乗れば新大阪駅まで約二時間半何もすることがない。呑んべ家族の意見は一致した、「食べて飲んで寝よら。」。隣接するアビオシティ加賀で地元の食材を使った弁当を購入し、昼間からアルコールを楽しんだ。案の定、乗車するや否や爆睡した。
福井と滋賀の県境で目覚めた頃、何やら様子がおかしい。「○○車掌、至急連絡ください。」「列車が□分遅れて☓☓駅に着きました。」「次の△△駅には十分遅れで到着予定です。」車内アナウンスが何度も流れている。時には、アナウンスの後ろから怒声が聞こえてくる。新大阪の乗り継ぎに十五分以上見込んでいた我々家族にとっては由々しき事態である。くろしおを一本乗り過ごせば、次の列車まで一時間待ちである。サンダーバードとくろしおで計五時間を見込んでいたのが、新大阪駅でプラス一時間、満腹状態なので飲めない・食べられない、じっと駅で一時間も待てない。天災・人身事故があった訳でもなく、「何が起こったんや!」車掌に言いたいが一向に我々の座席に来ない。琵琶湖を左に見ながら、「やばいよやばいよ~、もうちょっとしたら京都駅やで、なんで来んのや。」と相当焦っていた頃、車掌が汗だくで我々の車両に来た。「すいません、この調子なら乗り継ぎのくろしおギリギリなんですが、どうしたらいいですか?」、「はい、同じような方がいまして、新大阪駅に手配をお願いしています。つきましては申し訳ありませんが、新大阪駅に着く前に、七両車の出口付近で待っていただけませんか。」との返答。ガッテン承知之助、新大阪駅に着く前に車両を移動して、駅に着くやや否や、我々も含めた三組が係員の先導のもと、どうにかこうにか乗り継ぎ列車に乗ることが出来た。一分遅れの発車だった。
家族旅行をすれば何か事件が起こる。これも神様の思し召しか、やはりただでは済まされない。慰安旅行のはずの家族旅行に限って事件が起こる。けれども、これもある意味思い出だ。いつか家族団欒の時、「令和元年のお盆休みにあんなことあったな。」きっと笑えるはずだ。「あと何度家族旅行ができるのだろう?」、残された時間はもうない。