どうする和歌山の文化と芸術(2)
国会議員と直接話したことはない。しかし、その稚魚とも言える市町村県会議員くらいならちょっとした交流はある。政治を仕事にしていると言っても所詮は人間、先ずは人間性が問われるというもの。残念ながら、人間性豊かで教養があり人として魅力的な政治家に出会ったことがない。高慢で偽善的、時に秘めたコンプレックスが見え隠れする。かつて自民党の応援演説に駆り出された時、壇上で足組みし肘をついて座り、終始つまらなそう表情で何度も足を組み替える某参議院議員に議員の終着点を垣間見た。
岸本さんはこれとは全く違った。岸本さんとの初見、開口一番「僕は、民主党大嫌いなんですよ!」の言葉に臆することなく、和歌山県のために頑張りたいとひたすら熱い思いを語る。東大を出て大蔵省に入省したキャリアをひけらかすこともなく、視線や視点は温和で謙虚。されども、国会議員落選の苦汁をなめ、その後、保守王国和歌山で自民党に勝ち続けた底力を感じさせた。会話の中で、リスキリング、視聴覚障害者の教育、紀南の観光を重点的に行っていきたい、というのが印象的だった。一応敬意を表して先生と呼んでいたが、「(長嶋)先生、これからは周平さんと呼んでくださいよ。」の言葉には心打たれた。帰り際には、「微力ながら応援させていただきます。」と心境は変化。と言っても、自民党の対立候補擁立が危惧された。その後もどぶ板の挨拶回りでどんどん支持者を増やし、市町村長会からの支持も取り付け外堀を埋めていった。自民党県連は最終的に独自候補の擁立を断念、しかも一度蹴った推薦を岸本さんに決定した。県知事選は行われたものの、自民党の推薦を取り付けた時点で、孫子の兵法「戦わずして勝つ」を実践した岸本さんの人徳を改めて知ることに。
前置きが長くなった、4月22日のイベントの話に戻す。2時開演の20分前に到着すればいいだろうと高をくくっていた。しかし、紀南文化会館の道路を挟んだ駐車場は大渋滞。入場出来たのは10分前で会場内はほぼ満席と大盛況。第一部が岸本知事、さだまさしさん、澤和樹さん、コシノジュンコさん、川島ケイジさん4人が和歌山県を語るトークショー。澤さんは和歌山市出身の著名なヴァイオリニストであの東京藝術大学前学長とのこと。クラシック音楽に疎い僕でも、そのキャリアの凄まじさは理解できる。どうも、大阪出身のコシノジュンコさんは知事、長崎出身のさださんは澤さん繋がりのようだった。第二部はライブステージ。澤さんのソロ及びカルテットのクラシック演奏に魅了され、次の川島ケイジさんがカバーした「WOMAN”Wの悲劇“より」に聴き惚れた。真打ちは、さださん。軽妙なトークとは裏腹に、「主人公」や「精霊流し」ではしんみりとした気分に。三時間弱のイベントは中だるみすることなく、支払った金額以上の価値あるものだった。
今回の企画、旗振り役は一体誰だったのだろう。面子をみると、やはり岸本知事に違いない。そうなら、企画立案した知事の行動力に賛辞を送りたい。近畿のおまけと言われ続けている和歌山県が変わる予感がするとともに、和歌山県の良さを改めて知るいい機会になった。イベントの後は三家族での談笑会。4月22日は心嬉しい日になった。面白い人生を過ごしたいなら、「先ずは隗より始めよ」とも感じた。