院長のコラム

なんちゃってクルマ評論家(フェラーリ・ローマ編)

自動車評論家がフェラーリを表現する時、官能的、甘美という言葉をよく用いる。いずれの言葉も、性的なものを連想させることに違いない。「クルマに乗って感じる?そんなアホな。一生乗れない庶民に向かってのイメージ作りに過ぎない!」と僕はかつて内心断じていた。「イタリア」、「情熱の赤」、「絶え間ないレース活動」、連想ゲームを印象操作しているだけの陳腐な表現と思っていた。安易にその言葉を用いる評論家は、仕事を放棄した無能と見做していた。しかし、最も安いフェラーリとは言え、跳ね馬のついたエンブレムのクルマに実際乗ってみれば何となく分かったような気がした。

物事を語る時、大切なのは実体験に基づいた真の言葉である。もし僕がローマを語るとすれば、比較対象車はホンダNSXになる。「ホンダとフェラーリ?そんなアホな!」とツッコミが入りそうだが、かと言ってランボルギーニ・ウルスだとSUVで毛色が全く異なる。MRとFR、ハイブリッドとターボエンジン、2シーターと2+2シーターと異なるが、車格や価格は近似している。約7ヶ月乗った感想を忌憚なく記そうと思う。

NSXとローマの違いを一言で表すなら、「乗りたい!」と率直に思えるかどうかである。ローマは、大げさかもしれないが24時間365日運転したいという気持ちにさせてくれる。儀式は、フラッシュサーフェス化されたドアハンドルに手を差し込むところから始まる。ピーピー・カッチャという音とともにドアを開け、運転席に座る。先ずは、ステアリング上にあるタッチ・パッド式のスタートボタンに軽く手を触れスイッチ・オン。次に、ブレーキを踏みながらもう一度タッチ・パッド式のスタートボタンを押してエンジン始動。ブオォンという野太いサウンドが周囲に響き渡る。パドルシフトを1速に入れてアクセルを踏み出せば、さらにゴオーッと地響きのような轟音がうなる。なので、24時間運転したいところだが夜間に走らせるのは近隣に迷惑になる。運転中は終始、エンジン・サウンドとエンジンから生じるバイブレーションを体感できる。それは決して不快なものではなく五感に訴えるものである。ステアリング操作はシャープでクイック、グイグイと曲がる。左右の盛り上がったボンネットのお陰で車幅感覚は容易だ。もちろん、サラウンドビューを含めた種々の安全装置が付いているので駐車も安心。最低地上高も通常のフェラーリと較べて高く、段差はほぼ気にしなくていい。話が相当長くなった。ローマは、サーキットに行かなくても高速道路に乗らなくても、通勤だけでとにかく楽しいクルマなのだ。

僕の知る狭い世界の話で恐縮だが、フェラーリに現在乗っている人、これから乗ろうとしている人々は、子供の頃からフェラーリに乗ることを夢見ていたかつての少年がほとんどだ。それはランボルギーニも同様だが、フェラーリはその熱量が異なる。目標、目的のある人生は大事だし、夢を叶えることができればもちろん至福だ。けれども、まさかフェラーリに乗るなんて夢にも思わなかった自分が、そこに辿り着けた。フェラーリを体感した率直な感想は、「乗れてよかったぁ。」である。年金支給年齢まであと十年、なのに「LA NUOVA DOLCE VITA(新しい甘い生活)」という言葉が心躍らせる。フェラーリは、官能的というよりも五感を刺激する魅力的なクルマであった。
(追記)
毎日乗っていたにも関わらずバッテリーをあげてしまい、二度目の入院となりました。フェラーリは何とも繊細なクルマです。

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