やっと終わった。
9月27日火曜日、安倍元首相の国葬が執り行われた。当日は通常診療だった。テレビやネットニュースを見ることが出来なければ、2時15分に黙祷も捧げられなかった。帰宅して直様you tubeで、菅前首相の友人代表の弔辞を聞いて胸熱くなるものを感じた。その夜、知人7名ほどで食事会が予定されていた。三々五々集うなり、当然国葬のことも話題に上った。けれど、誰も反対意見を唱えるものはいなかった。全員揃って安倍元首相に対して改めて献杯した。マスコミは連日「今回の国葬には賛否両論がある!」とさも賛否拮抗しているかのように報道していた。しかし、僕の知る限り、見聞きする範囲では、周囲に国葬反対論者はいなかった。むしろ、その日集った誰もが、マスコミやメディアを非難し、その報道姿勢を批判していた。「やっと不毛な報道(運動)が終わる。」と思うと僕はせいせいした。
日本の憲政史上、最長の首相連続在任期間を記録した安倍元首相。安倍さんは君主でもなければ独裁者でもない。民主主義社会において、在任期間に行われた6回の選挙すべてに勝利した自由民主党の党首である。民意が安倍さんに国政を付託し続けた結果に過ぎない。残念ながら、第一次・第二次政権もご自身の体調で辞任せざるを得なくなった。「病気を理由に政権を放棄した!」と揶揄する声がある。潰瘍性大腸炎(UC)診療に従事するものとして、患者に対する罵倒・冒涜行為と声を大にして言いたい。UCは、頻回の下痢と下血、腹痛を伴う原因不明の腸炎。ストレスが大敵の難病である。なのに、日本国首相という国内で最もストレスのかかる役職を、長期間に渡って勤め続けたことは驚異としか言いようがない。今後の国際情勢いかんでは、第三次政権もあり得たかもしれない。「国葬は国会決議で。」「国葬に規定を。」という声がある。しかし、安倍さんほどの傑出した政治家はもう二度と現れないから国葬議論は時間の無駄だ。節目の日を迎え消失感はさらに増した。
やっと終わったと言えば、朝ドラ「ちむどんどん」である。途中で見ることを断念したが、平日休診の朝、時間の都合上どうしても目に入ってしまう。流し見でさえも不快を通り越して憤りを覚えた。「いかに視聴者を不快にさせるか!」、NHKが手掛けた初の実験的炎上ドラマと解釈するべきなのか。子供が巣立った中高年にTVドラマは必須である。「競争の番人」「魔法のリノベ」「プリズム」「六本木クラス」「石子と羽男」「初恋の悪魔」等、今夏のドラマは佳作揃いだった。中でも一番ハマったのは、NHKの夜ドラ「あなたのブツが、ここに」。番組概要をホームページから抜粋すると、「コロナ禍で激変するニッポンの飲食、物流業界。どこか投げやりだった主人公が、キャバ嬢から宅配ドライバーに転身し、さまざまな困難に立ち向かう中で、自分の人生を肯定できるようになっていくまでの物語。」だ。ノンフィクションかと思うくらいに日常を淡々と描いている。それ故、「あるある」が散りばめられていて登場人物の一人ひとりが魅力的でかつ共感出来た。セリフも演技も仰々しくない。見るほどに心にじんわり沁みてくる。「夜ドラを朝ドラに変えれば、」と思っていたら、案の定ネット掲示板でも同様の意見が圧倒的に占めていた。
国内外に激動の2022年も残すところ3ヶ月を切った。ロシアのウクライナ侵攻が早く終わることを願ってやまない。ここニッポンでは、安倍劇場がテロリストによって終焉を迎えた。これを機に偏向報道も終わって欲しい。作為満載のこの情報化社会で信じることが出来るのは誰でもない、「自分の良心だああーーっ!」(10月1日 アントニオ猪木さんの訃報に際して)。