院長のコラム

サマセット・モームスイート

2013.09.22

夢と現実

期待と緊張で恐る恐る部屋に入ったところ、「あれ、映画と違うな。」が第一印象であった。映画では、手前にリビングがあって奥のベッドルームが見渡せる縦長の部屋だった。今回の部屋は、リビング右隣りにベッドルームがあった。部屋で正式なチェックインを済ませ、日本人スタッフから部屋の説明をされた。

いよいよあの有名なベッドルームである。赤を基調とした鮮やかなインテリアが先ず目に飛び込んできた。チーク材で出来た天蓋付きベッドには、金色に塗られた装飾が施されていた。通常、赤と金の組み合わせは仰々しいものだが、歴史に裏打ちされた風格なのか、むしろ心地よさを感じた。
ベッドルームの奥にクローゼットがあり、その隣にバスルームが設えられていた。こちらは、赤茶色を基調としたインテリアで、ベッドルームとの色調の統一感が絶妙であった。

日本人スタッフから部屋の説明を受けた後、くつろぐ間もなく水泳の準備である。1年前から体力維持のため泳ぐようになった。以来、プールが併設されたホテルに泊まる際は必ず水着を持参するようになった。時刻は午後5時を過ぎ、明朝の出発が比較的早く、泳ぐ時間はその時しかなかった。我々がプールに着いた頃には、先ほどの雷雨はちょうどおさまっていた。縦25mほどのプールだったが、今まで経験したプールの中で一番深く、最も深いところで2.5mほどあったろうか。真偽のほどは分からないが、川の側にあるプールなので川から水をひいているのだろうか、消毒薬臭さがない皮膚に優しさを感じる水質だった。

夕食は、チャオプラヤ川沿いにある屋外のザ・リバーサイドテラスのブッフェを選択した。美味しい多国籍料理に、フロアマネージャーが選択してくれたワイン、熱帯地域とは言え川のほとりに吹く心地良い風、チャオプラヤ川を行き交う幾つもの船。今現在この眼前で夢がかなっているという高揚感の一方、旅の疲れに、ほろ酔い加減も手伝って、現実と夢幻が交錯する不思議な感覚を覚えた。
夢見心地はその後も続いた。赤が主体のインテリアに王様のようなベッドも、違和感なく受け入れられた。むしろ、以前ここに来たことがあったかも、既視感さえ覚えた。夢と現実、前世と現世、二次元と三次元、脳と肉体、この両者の微妙な融合が、この世に生きていないような感覚を僕に引き起こした。

二十歳前後に何気なく見た雑誌の紀行文が頭の片隅に焼き付けられ、幾星霜を経て今回実現化した。時間があってもお金がなければ実現化しない、逆もまたしかり。両者を兼ね備えていたとしても、健康でなければ旅行など出来ない。例え三者が備わったとしても、自分の周囲の様々な人々の協力がなければ今回の旅行は成立し得なかった。そのように考えると、人生には潮時があることを感じずにはおれなかった。何よりも、人生は得体のしれない運命というものに導かれていることに愕然とせざるを得なかった。

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