サンタクロースからの贈り物(ただし自作自演)
昨年9月、突如として携帯電話に届いた3枚の写真。これから生産工程の様子が徐々に送られてくるのだろう、期待に胸を膨らませた。何の気なしにローマを予約した方の掲示板を見ていたら、思わず目が点になった。「完成しました!」のコメントとともに同じ写真が挙げられていたのだ。何と、ケージに入ったミニカーと思い込んでいたのは実車だった。「えーっ、もう出来たの?」改めて写真を拡大して見直した。ホイールは確かにオーダーしたもの、ブレーキキャリパーはレッド、ハンドルは右側にあるようだ。即座にディーラー担当者に電話をした。「アプリに写真が送られてきて、もう完成したようですが。」と僕、「本当ですか?あっ、本当ですね、出来ているようですね。」と他人事のような担当者の返答。「これからサーキットでの試験走行、船便での輸送、日本に到着してからのPDI(出荷前点検)があるので、まだ納期は読めませんね。」とつれない返事。納期が決定しなければ、車の入れ替え、ウルスの売却も出来ない。予定を立てようがない。
11月下旬には、「ローマが日本に到着しました。年内の納車も可能です。」とディーラー担当者から電話が入った。「えっ、本当ですか?」、2022年6月納車予定が半年も前倒しになった。本来ならウルスの後継機のはずだったが、ウルスのような高価格車を売却するには、買い叩かれないよう時間的余裕が欲しかった。年の瀬で慌ただしい時期である、思案の末、交渉容易な2年乗ったレクサスRXを売却することにし、ウルスは残価設定期間を満了することに決めた。納車前の種々の手続きを粛々と済ませ、納車日はいみじくも12月25日のクリスマスとなった。休診日の晴れた白い朝のクリニック駐車場、積載車から降ろされる真っ白なローマはまさに神々しかった。静寂の中、轟くエンジン音に度肝を抜かれた。「これがフェラーリか。」、訳も分からず神妙な気持ちになった。
納車されて約3ヶ月後、メーターパネルに突然、「エンジン不調 すぐにディーラーに車を走らせてください。」の警告灯が表示された。走行に支障はなかったが、エンジンを始動する度に警告表示されるためディーラー担当者に連絡した。案の定、直様サービスセンターに入院となった。「これもフェラーリか。」、戸惑いながらも妙に納得せざるを得なかった。入院中、ずっと思っていたのは、「Roma! Come back to me!(ローマ、僕の元に戻ってきて!)」だった。愛車という言葉がある。ローマに会うまで其の意味は、自分が選んだ大事にしている車に過ぎなかった。「なぜここにいない?」、「明日も乗れないなんて。」、「君がいなくちゃ!」、思いは募るばかりである。愛車の意味を心底初めて知った。原因は、エンジンタンクの感知センサーだったようだ。本国から部品を取り寄せ修理完了まで約3週間を要した。月々の返済ローンの4分の3が無駄になった。しかし、帰ってきてくれただけで十分、「これぞフェラーリか。」、もはや洗脳されているとしか言いようがない。