院長のコラム

パチモン

本当のパチモンは?

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関西では、ブランド品の偽物や粗悪品のことをパチモンと言う。大阪弁で盗むことを「パチる」といい、パチったもの(デザインを盗んだもの)を略してパチモンというのが語源だそうである。他に、バチモノ、バッタモンと言うこともある。

山中先生のノーベル賞受賞でわく一方、とある研究者のiPS細胞にまつわる虚偽の発表が話題になっている。ある大手新聞が、山中先生に先んじてその研究者がiPS細胞を臨床応用したとトップニュースで伝え、各紙が追随報道をしたそうである。オーバーナイト・センセーションになるかと思いきや、違った意味でセンセーションを巻き起こすことになってしまった。今回の発表内容の疑惑はもちろん、それ以前の研究発表・研究内容に対する真偽、肩書詐称、実態のない研究に対する税金から拠出された研究費の使い道等々。

本人がインタビューに答える姿を見て、つくづくと思った、「やっぱり、人間第一印象が大事だ」と。山中先生は体型がスリムで眼光が鋭い上、会見ではスーツにネクタイのためか、一見とっつきにくい気難しそうな典型的な研究者に映る。一方、虚偽の発表をしたとされる研究者は、山中先生とは対極の風貌・外観で、一言でいえば「だらだら」だった。
何よりも、会見での質疑応答を見てびっくりした。政治・経済・芸能・事件等、ワイドショーでたくさんのインタビューを見てきたが、あんなにしどろもどろの会見は見たことがない。お笑い芸人がコントでもしているのか、と錯覚するくらいシュール過ぎて思わず笑ってしまったし、内心「こいつ、パチモンや!」と思った。

嘘をつくことは悪いことだが、この日本に、この研究者以上の研究者がいることは、ほとんど報じられていない。日本麻酔科学会の特別委員会が、とある大学の元准教授の論文212本のうち、172本を捏造と判断したそうである。これらがすべて撤回処分となった場合、撤回論文数の世界最多記録になるそうだ。
両者の違いは何だろうか。かたや狂言癖・妄想癖の強い愉快犯、かたや世界最多の捏造論文を作成した確信犯。一人は衆人環視に晒され、もう一人はテレビ報道に取り上げられることはない。どっちもどっちであるが、世界一と言う点では、後者の方に重大な罪があるように思うのだが。

しかし、今回一番のパチモンは、自己顕示欲の強い彼の言い分をそのまま鵜呑みにして、検証することなく世間に垂れ流したマスコミである。少し質問するだけでボロが溢れ出る彼に、記者は疑問を持つことはなかったのだろうか。自意識過剰な彼を散々担いでおいて、形勢不利と見るや否や、梯子を外して知らんふり。記者からの質問に窮して無様な格好を晒す彼を、自業自得と言えばそうなのだろうが、同じように糾弾されるべきは、取材した記者であり、その記事を掲載した編集者であり、記事を掲載した新聞各社ではなかろうか。こう思うのは僕だけであろうか。

彼をかばう気持ちは毛頭ないが、考えようによっては、森◯氏は運が悪かった。山中先生がノーベル賞を今年獲っていなければ、こんなに注目されることはなかっただろうに。門外漢の新聞記者にありもしない発表を吹聴しなければ、ここまでマスコミのスケープゴートにされることはなかっただろうに。某大学の准教授のように、斯界の狼少年として、ひっそりと消えて行くだけだったのに。そう考えると、これも一種の集団によるいじめではないだろうか、とも感じた。

ノーベル賞受賞の光と影、悲喜こもごももさることながら、記事・報道のあり方まで色々なことを考えさせられた出来事だった。

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