院長のコラム

ブームの終焉

7月24日(水)、携帯電話に久しぶりのLINE連絡が届いた。お相手は豊中の開業医、内容は「27日土曜日、芦屋の花火大会を海から見ませんか?」だった。O先生とは2019年末、ランボルギーニ大阪ディナーイベントでテーブルが同席だったのが御縁。同年代というだけで生まれた場所、卒業大学も専門科も全く異なっていた。けれど妙に意気投合し、以来、大阪に宿泊で行く際、都合が合えば食事する仲に。以前にも同様の花火大会のお誘いを受けたが、診療のある土曜日で所用があったためお断りしていた。しかし今回は、その日にどうしても大阪に行かざるを得ない切羽詰まった事情がちょうどあった。

後に引けない状況とは金銭に関わる重大問題。7月上旬、馴染の時計店からしばらくぶりに電話が入った。嫌ぁぁな予感通り、「注文を受けていた時計が近日中に入荷しそうですが、いかがしましょうか?」だった。注文していたというよりも、エントリーしていた時計の購入権が今になって回ってきたというのが正解。エントリーリストはブラックボックスで、何人待っていて何番目かは全く知らされない。おそらく4年ほど前、コロナ禍少し前に希望を伝えていたモデルで、昨年夏頃には「次は長嶋さんの番ですよ。」とは伝えられていた。しかし、待てど暮らせど一向に連絡がなかった。ご存知のように、コロナ禍で投入された莫大な税金と緩和された経済対策は市場にあり余るお金をばらまいた。お金が余れば物価は上がり、物価が上がれば賃金も上がる。その一部は、高級腕時計市場に流れバブルを生じさせた。折からの戦争もあり、原材料費の高騰も加わってブランド品の定価はこの四年間でみるみるうちに上がっていった。我々日本人は、これらに円安が手伝ってとてつもない価格上昇に見舞われることに。

僕がエントリーしていた腕時計の定価は、4年前と比べて今や1.6倍に上昇。腕時計バブルピーク時(2022年2、3月と言われている)は、二次マーケットで定価の4倍で取引されていたことも。バブル崩壊と度重なる価格改定で定価と二次マーケットの価格差はかなり是正されたとはいえ、現在でも2倍の乖離がある。「注文を受けていた時計が近日中に入荷しそうですが、いかがしましょうか?」と連絡をされて、160%も値上がった時計を二つ返事で購入できる余裕などなかった。かといって二次マーケットよりは半値、しかも断ればそのブランドの心証が悪くなり二度と購入できなくなるかもしれない。思案の末、当初考慮していた予算以外はローンを組むことで落とし所に。このブランドの更に怖いところは、2022年以降、最低でも年に二度の価格改定をしてきたこと。今年も昨年同様2月にあり、昨年を考慮すると今年も8月に値上げが予想された。同じものが月を跨いだだけで数十万円アップなんて、事前情報は全く無く、ブランドに言われるがままなすがまま翻弄されるがまま。契約条件といえども、堪忍袋の緒が切れるというもの。値上げを予想して7月27日に引き取りに行くことを決めた。

インフレに人件費および原材料費の上昇による高級嗜好品の高騰はそろそろ終焉を迎えている(と感じている)。中国経済の低迷が顕著で、世界三大ブランドグループと言われる「LVMH」「ケリング」「リシュモン」の2024年上半期の売上は予想を下回っていて、今後も回復を見込めないでいる。エントリーしている物品がなくなった現在、「驕る平家は久しからず」、高級ブランドの凋落をほくそ笑みながら眺めていようと思う。

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