ランゲアンドゾーネの大英断、その後
Google analyticsを用いると、我がホームページにどの地域からどのくらいの人が訪れて来てくれるのか大まかに分かる。大雑把だが、見られているページも分かる。少し前は、子息を持つ保護者が辿り着くのだろう、海陽学園ものが根強く読まれていた。ここ最近、「ランゲアンドゾーネの大英断」がよく読まれている。理由は全く分からない。内容は前向きでもなければ興味をそそるものでもない。心底欲しかったステンレススチール(SS)製オデュッセウスを購入できなくなったこと、ランゲアンドゾーネのその販売方法を暗に批判する内容だった。文末は、「ランゲアンドゾーネは、どんなことがあっても絶対に買わない。」と締めくくられていた。読み返すと、当時よほど腹に据えかねていたのが思い出された。
ランゲアンドゾーネはドイツの時計メーカーである。ドイツ車に通じる安心と信頼性、バウハウスの流れを組んだシンプルかつ美しい機能美、数奇な歴史、1994年に再興したにも関わらず世界五大腕時計ブランドの一角を占めるようになった高い技術力。スイス時計とは異なる質実剛健さが魅力で、時計通が一目置く時計ブランドである。SEIKOから腕時計沼にはまり込んだ僕も、ランゲアンドゾーネはいつか欲しい憧れのブランドだった。とは言え、基本的に革ベルトモデルしかないのが難点だった。僕の時計選びは、シャツにネクタイをしないフリーター、オールシーズン着用可能ということでメタルブレスが原則である。そこに現れたのがSS製オデュッセウスだった。価格が分からないまま、情報を得た翌日に正規代理店に予約を申し込んだくらいだ。したがって、購入できないと分かった時の落胆は理解してもらえると思う。
SS製オデュッセウスの発表から半年後の昨年(2020)春、突如としてオデュッセウスのホワイトゴールドモデル(WG)が発表された。素材はランゲ得意の貴金属、文字盤はコーポレートカラーでもあるスレートグレー、ベルトは黒のラバーベルト。SS製よりもよりランゲ色の濃いモデルである。「ランゲは買うまい!」と誓ったものの、あえなく決意はぐらついた。ショップに直接問い合わせて門前払いを食らうのが癪なので、担当外商に聞いてもらうことにした。今回は購入制限がなく、したがって一見さんも購入可能、問い合わせた時点なら予約の一番で年内の納品が可能なことを知らされた。2つに1つならならSS製、とはいえブランドイメージを体現しているのはWG製、思案の末、オデュッセウス貯金を、結局オデュッセウス購入にまわすことにした。
なぜ、「ランゲアンドゾーネの大英断」が読まれているのか分からない。僕と同じように、SS製オデュッセウスを購入できなかった方から共感が得られたのか?それにしても、こんなマニアックな話をたくさんの人が読むものだろうか?高価なモノを購入したことを吹聴するのは気が引けるが、その後のことをきちんと記しておかないと嘘をつくことになる。恥ずかしながら、振り上げた拳で自分の頬を殴りつける結果になってしまった。僕の決意なんて所詮ポッキーのようなものだ。槇原敬之の「もう恋なんてしない」ではないが、「○○○は買うまい!」なんて言わないよ絶対、の気分である。