ルイヴィトン タンブールホライゾン ライト・アップ
クルマは乗っていれば、バッグやアクセサリーは持って身に着けていれば、ブランドの服は着てさえいれば自己主張出来る。趣味嗜好は見るからに分かる。しかし、腕時計は微妙だ。上着を着ていればまず見えることはない。僕のように年間を通してYシャツをほとんど着ない人間なら、上着を脱いでカットソーがまくり上がればチラ見えすることはある。しかし、Yシャツを着る人にとって、袖から時計がはみ出すのは野暮だそうだ。夏を除いて、腕時計を前面に押し出せる機会はそうそうない。「腕時計は男の唯一のアクセサリー、だからこそこだわるべき。」とは言え、見せる機会の少ないものにこだわるのはどうか、腕時計バブルの昨今、懐疑的になっている。
腕時計専門誌のウェブサイトを見ていたら、ルイ・ヴィトンの新作コネクテッドウオッチの評判がやけにいい。ベゼルレスデザインはもちろんのこと、組み込まれたLEDがイルミネーションのように輝くギミックがルイ・ヴィトンらしいとのこと。発売されてまもなく確か2月下旬、梅田阪急百貨店に立ち寄った際、サンプルを手にとって見る機会を得た。表面は前面と側面がドーム状に一体化していて、機械式時計のレッセンスに似たデザイン。肝いりのイルミネーションは、前面のディスプレイはもとより側面も同時に輝く。今まで観たどの時計とも異なり、まさに度肝を抜かれた。そうは言っても、それなりの値段はする。躊躇していたら、担当者から「長嶋さん、実は価格改定があって値上がりします。今日予約を入れてくれたら改定前の価格で購入出来ます。」と悪魔のささやき。あえなく背中を突き飛ばされた。発売間近にも関わらず在庫がなく、2〜3ヶ月の納期と告げられた。
その後、クルマ同様、半導体不足がこの分野にも及んでいるようで、予定納期になっても連絡がこない。予約から5ヶ月後の7月中旬、ようやく納品となった。現在も問い合わせが多く納期未定とのこと。使ってみて約3ヶ月の正直な感想を。スマートウォッチとして得られる情報量は決して多くない。ルイ・ヴィトンお得意の旅に関する情報も、日本にいれば無用の長物。この時計の最大の特徴はテクノロジーとアートの融合、秀逸なデザインとその名の通り光り輝くライトアップである。日常生活においてロレックスやランゲアンドゾーネを身に着けていても、それを指摘されることはまずない。しかし、タンブールホライゾン ライト・アップは、必ずと言っていいほど「その時計なんですか?」と尋ねられる。「ルイヴィトンのコネクテッドウオッチです。」と何度ドヤ顔出来たことか。この時計が買いかどうかと問われれば、ファッショニスタでこの金額を出せる人には強く推奨する。機械式時計を何本か持っていて、コネクテッドウオッチを検討している僕のような人間にも十分おすすめ出来る。
腕時計バブルは落ち着きつつあるとは言え、以前のような世界に戻るとは思えない。「ロレックスは人気があって資産価値もある。」と考えるようになった人が多くなった。ロレックスコーナーはいつ行っても什器に現品がない状態が続いている。市場参加者が多くなり市場全体がボリューム及びボトムアップしたものの、飽和感はまだない。そこから少し距離を置こうと思っていた矢先のルイヴィトンのスマートウォッチ。ラグジュアリー好きの道楽と思われるかもしれないが、機械式時計でそれなりのものはもはや三桁万円する。それに比べれば、半値で優に倍以上ドヤ顔できる。タンブールホライゾン ライト・アップは、これからのラグジュアリー腕時計の方向性に新たな可能性を示している、ような気がしている。