ルパン三世とゼニス
ルパン三世と言えば小学生の時に見ていたアニメ。その後、続編や多数の映画もあったようだが、テレビの第一シリーズと映画「ルパンVS複製人間」を見たくらいで、「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」ほどの思い入れはなかった。話は変わって、ゼニスと言えば時計通なら誰もが知る高級時計ブランド。クロノグラフ・ムーブメント「エル・プリメロ」は有名で、かつてはロレックス・デイトナにも搭載されていた。意趣返しではないだろうが、2021年に発売されたクロノマスター・スポーツはデイトナに似ていると話題になった。そのせいか、デイトナほどではないけれどもクロノマスター・スポーツも入手困難モデルのようだ。
ゼニスがエル・プリメロを搭載したモデルA384を発表したのが1969年、アニメ・ルパン三世の放映開始は1971年。その劇中、次元大介が着用していたのが何とA384だったそうだ。2019年、エル・プリメロキャリバー50周年を記念してクロノマスター・リバイバルA384がリリースされた。それとともに、約50年の時を経て、アニメで描かれた腕時計がこのモデルで現実のものとして再現された。この情報を知るまでに3本のモデルが販売されていたようで、何れも限定、即完売。しかし、もし情報を知ったとしても、ルパン三世に格別の感情がなく、モデル自体も特別感はなくスルーしていたに違いない。けれど、今年の2月、ファイナルエディションの情報に出くわし、「これすごくいいぞ!」思わず携帯電話を取った。
「時計にはもう興味がなくなった。」、舌の根も乾かぬうちにこれだ。第一弾のブラック、第二弾のホワイトを真っ二つにぶった切って組み合わせたようなバイカラーの奇抜なダイアル。シャネルの腕時計J12パラドックスを初めて見た時のインパクトを更に上回る衝撃を受けた。時計店担当者に問い合わせたところ、世界限定250本、毎回争奪戦で今回は最終版、しかも最終に相応しいダイアル、購入ハードルは更に高くなっているとのこと。ダメ元で予約リストに載せてもらうことにし、春先には確保できそうだという連絡が来た。案の定、高級時計オンラインマーケットプレイス「Chrono24」ではプレミアがついて販売されていた。入荷連絡が来たのは、申し込んでから5ヶ月が経っていた。
大阪に行く予定がなく、先月ようやく引き取りに行ってきた。実機を手に取ってびっくり「これ、おもちゃ?」、チタン製のケースとブレスレット、しかもブレスレットは梯子状になっていてセンターリンクがないため軽さ倍増。ヴィンテージ感の演出はブレスレットの留め具にも施されていて、どうにもこうにも締りが悪い。値段に見合う重厚感が全く無く、購入したことを初めて後悔した腕時計になった。精度を確かめるため、購入後連日装着してみた。初日、時計をつけたにも関わらず出掛け、「あっ、時計するの忘れた!」と思ったくらい腕にその存在を感じさせなかった。通常、大腸内視鏡検査時、左腕の微妙な感覚を回避するため時計を外すようにしている。しかし、ことこの時計に関しては終日つけていられる。37mmというやや小ぶりのケース計とラダーブレスレットは絶妙に腕にしっくりくる。診療や検査時、チラ見えする奇抜なダイアルにニンマリしている。
この年齢になって、また価値観をぶっ壊された。ずっと、腕時計に重厚感や堅牢性を求めてきた。なのに、腕時計本来の在り方、「今、何時?」を知らせるためには、小ぶりで軽いことが重要と知った。ゼニス クロノマスターリバイバルA384 ルパン三世 ファイナルエディションモデルに出会えて良かった。今は、心底思っている。