三度目の正直
今度こそSOMEDAY
二十年数年前、当直でもらった現金を片手に、旭川駅前大通りにある楽器店に飛び込んだ。佐野元春の「サムデイ」を弾きたいと思っていた僕が選択するギターは決まっていた。フェンダー社のストラトキャスターである。佐野さんは赤のものを使用しているが、僕は迷わず黒に決めた。当時の価格で六万円くらいはしただろうか、一ヶ月ほどコードをかき鳴らしてみたが飽きっぽい性分である、以後、まさにお荷物状態となってしまった。北海道の旭川、釧路、岩内、千葉の西船橋と4年間で4回の転居をしたが、その都度手放すかどうか思案した。
そんな黒のストラトキャスターも、五年ほど前にいよいよ日の目を見ることになった。長男がギターを弾きたいと言い出したので、物置にしまっていたものを取り出してきた。燦然と輝くFenderの文字に、ギターの先生から「なかなか良い物」とお墨付きが付いたこともあり、以後長男の愛用品になった。時代を経て親から子へ受け継ぐことが出来た。良い物を買っておいて良かった、と実感した。
開業してまもなく、体力低下に加えて腰回りの贅肉を感じていた僕は、建築家の千葉さんの影響もありロードバイクを購入することにした。千葉さんからイタリアのデ・ローザを勧められたが、値段が高く地元のショップでは取り扱っていないこともあり、十五万円ほどのフェルトにした。数ヶ月間は週末を中心に乗っていたが、トンネル走行時に恐怖感を覚えるようになってから段々と乗る回数が減って行き、半年もしない間にインテリアに成り下がってしまった。しかし、数年前から、全寮制の学校に入っている次男が帰省する度に、このロードバイクに喜んで乗るようになった。いいタイミングで親から子へ受け継ぐことが出来た。良い物を買っておいて良かった、またしても実感した。
ギター教室、初日。手持ちのギターを持参するよう言われた。事情があって現在ギターを弾けない長男が置いていった黒のストラトキャスターを持っていった。先生から「弾き語りを主体にしたいので、アコースティックもしくはエレアコにしましょう。無ければ貸しますよ。」と言われたが、日々の練習もしたいのでエレアコを購入することに決めた。ちなみに、一緒に通っているギター初心者の不動産会社専務は、「エレキ?アコースティック?エコアレ?それなんなんですか?」のレベルである。
翌日、地元の楽器店に足を運んだ。末永く本格的に取り組んで行こうと決めていた僕は、ミュージシャンでもある店員さんに「多少値段が高くても良い物が欲しいんですよ。ボディは黒でお願いします。」と相談したところ、「斉藤和義も使っているギブソンのJ-45なんかどうですか。」と店員さんの返事。「それは絶対いいですね。ところでどれくらいの値段するんですか。」と問うたところ、「三十五万円くらいですかね。」の店員さんの答えに卒倒してしまった。ほぼ初心者に三十五万円のギターは、まさに猫に小判である。親身な店員さんとあれこれ話をした結果、ヤマハのCPX1200を購入することにした。
第二回目のレッスンに早速持って行った。「エレアコ購入しました。先生どうですか?」、先生が握って触って鳴らしてみて「うーん、いいですね~。」としんみり答えてくれた。
比較的高価な趣味品の購入が三度目になる。今度こそ、諦めず地道に取り組んで行こうと思う。とともに、今度こそは子供達に譲らないよう頑張らなければならない。そして、いつの日にか本当に「SOMEDAY」を歌えるようになりたい、そう心新たにしている。