三流男のつまらない流儀(1)
大切にしていること
NHKの人気番組に「プロフェッショナル仕事の流儀」がある。決めて観ることはほとんどなく、寝る前の手持ち無沙汰な時間にテレビのチャンネルを回して偶然に出会う事が多い。したがって、ソファに寝転んでリラックスしながら聞き流すように見流している。その世界の一流と言われる人の目的意識の高さ・強さを意識するとともに、その執念に驚かされる。しかし一方、物事には光と影があり、成功の裏にはその何倍いや何十倍もの失敗と挫折があるはずである。番組の性質上マイナス部分に焦点を当てるわけにいかず、その影の部分をむしろ成功へのステップとして、さらりとしか取り上げていないと感じることも多く、見終えて釈然としないこともある。
さて、自身の仕事に対してどうだろうかと考えてみたら、こだわりはあるが流儀というほど高尚なものは持ち合わせていないように思う。月が地球にぶつかるくらいあり得ない話だが、もし僕が番組で取り上げられることになったとしても、丁重にお断りするだろう。仕事に対するこだわりは、公衆の面前で曝すものではなく自分の心に秘めておくものだと思っている。声に出して言えば、薄っぺらな軽いものになるような気がするからだ。 妻は、僕のことを褒めなければ持ち上げもしない。かといって、けなすわけでもない。そんな妻がある時、「飲み会の誘いは立派なくらい断らないわね。」と妙に感心されてふと気がついた、自分に流儀といえるものがあるならこれだと。 単なる飲み会といえども仕事上の約束と同様、約束にかわりない。飲み会というのは、心通じる人と気兼ねなく本音で語れる楽しい一時である。その一員にしてもらったという感謝の気持ちと、声をかけてもらったという御縁を感じるので、下手をすれば仕事以上に約束を果たすよう努める。飲み会が続いた時は、気分がのらず断ろうかとふと浮かぶこともあるが、自分が不参加の会で盛り上がることを想像すると、それが許せなくて無理をしてでも参加する。そういう時に限って、新しい出会いがあったり、いつもより盛会だったりするから不思議なものである。 帰宅して食事をして寛いでいる時に、不意に誘いの電話が来ることもある。時には、風呂あがりでパジャマを着ている時に電話がかかってくることもある。それでも誘いは断らない。人には打ち明けられない悩みを相談されるのかもしれない、仕事の相談かもしれない、単なるしゃべり相手が欲しいのかもしれない、訳など聞かずに二つ返事で「それでは、また後で」と携帯を切って駆けつける。電話をかけてくれたことが素直に嬉しい。ちなみに、女性から電話がかかったことは一度もない。 |
僕はいつか健さんのようになれますか。 |