院長のコラム

九月の憂鬱(ルイ・ヴィトンからの誕生祝い)

九月になると気分がどんよりする。少し前なら、九月になれば秋の気配、夜になると虫の声が聞かれ始め、朝晩の気温もどこかひんやりして盛夏が終わる侘しさが。しかし今や、特に今年は、九月になっても日中は酷暑、夜間は熱帯夜が続いており、九月はもはや夏と言っても過言ではない。季節の移ろいがなくなってもなお気分が滅入るのは誕生月だから。五十も半ばを過ぎた頃から、「長嶋さんって、おいくつですか?」と聞かれて戸惑うようになった。自分の年齢を覚えていないからすぐに返答できない。誕生日を迎えると否が応でも自分の年齢を認識せざるを得ない。「もう誕生日なんていいや、どうせ死ぬまでのカウントダウンなんでしょ。」、祝ってもらいたくないし、「おめでとう」の言葉も妙に空々しい。こと自分の年齢や誕生日に関しては自暴自棄になっている。

祝ってほしくない誕生日だが、ここ数年誕生日にお届け物、花とお祝いの品が届く。送り主は、お付き合いのあるルイ・ヴィトンの店舗担当者。ルイ・ヴィトンの顧客ランクがどうなっているか、自分がどれくらいの立ち位置にいるのか本当のところよく分からない。ルイ・ヴィトンほどの超高級ブランドの顧客層から類推すると、おそらく下層に違いない。担当者が決まっていて、少額でも定期的に購入しているのがきっと奏効しているのだろう。そうは言っても、日頃のご愛顧に感謝してということは、ドライに考えれば使った金額のキャッシュバック。単に自分から自分への間接的なご褒美に過ぎない。ビジネスライクに分析すれば興ざめするけれど、誰にも祝って欲しくない心情、誰にも祝ってもらえない状況では率直に嬉しい。

ルイ・ヴィトンと言えば、この場で何度も語ってきたことだが、かつては最も忌み嫌うブランドだった。特に、ヨウジヤマモト社が民事再生法の適用を申請した2009年がピーク。「ルイ・ヴィトンを持たないのは時代遅れよ。」と言わんばかりの、莫大な費用をかけた宣伝広告に雑誌とタイアップした提灯記事。ブランド戦略が効果的だったのか、猫も杓子も取り敢えずルイ・ヴィトンのバッグという時期が確かにあった。高級ブランドバックながら、ジャージのセットアップだったり、普段着コーディネイトに合わせているシーンを見るにつけ、ファッションに対して尖ってると自負している僕にとっては笑止千万かつ言語道断だった。反骨精神の塊のような服を着る者にとって当然ながら、マーケティング活動に終止する消費社会の権化のようなルイ・ヴィトンはもってのほかだった。「ルイ・ヴィトンなんてやると言われても要らんわ!」、十五年ほど前なら開業して2、3年目、四十代前半にはこんなことをうそぶいていた。それが今頃何故に?

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