似た者同士〜芦屋の花火大会にて(3)〜
21時に帰港後、ボートを係留してから船上での焼肉パーティ。O先生厳選の肉とそれぞれが持ち寄ったワインとシャンパンで、同業者交流および家族交流会。O先生主催の会なので先生に近い思考と嗜好、そして志向の人が集っていた。ということは、僕がO先生に直ぐ様打ち解けられたように、初対面の医師ともたちまち裃を脱ぐことが出来た。海上からの花火大会と船上でのバーベキュー、非日常がいつもより気分を解放してくれたのかもしれない。類は類を呼ぶという言葉通り、驕り高ぶらず、オープンマインドで、分別があり、さらに酒を嗜める素敵な人々と至福のひとときを過ごすことが出来た。帰りのタクシーで、まだ何者にもなっていない長女が、「成金パーティーみたい。」と揶揄したけれども僕はたしなめた。
「開業医」イコール「リッチ」すなわち「儲かっている」と固定観念を持っている方がいるかもしれない。自分のことで言えば、確かに勤務医時代より収入は増えた。しかし、儲けようと思って開業した訳ではない。自らの素性、境遇と生き方、医師としての信念と限界、思案の末に自分が自分らしくあり続けられるのが開業医という判断に至った。端から見れば開業医は裕福そうに見えるかもしれないが、そもそも医師が儲けに走ることは不正であり医師法違反で罰せられる。医療費は「診療報酬」と呼ばれ事細かく決められていて全国一律、厳しいルールはあるものの頑張った分だけ報われるのが開業医。それは飲食や美容等どの業種とも変わらない。したがって、開業医間でも温度差は出てくる。だから、O先生と同じく僕も地元で趣味嗜好を語れる同業者が少ない。今回集ったのはセレブ自慢ではなく似た者同士ということ。
似た者同士と言えば、地元医療従事者間で浮いた僕でも、異業種の方々とは多方面にわたって交流させてもらえている。先日も、珍しく妻に付き合ってパン屋に行ったら、「長嶋先生ですよね。院長コラムを見ていますよ。」と年上男性から声をかけられた。共通する知人がいたので後日、何度か食事をともにさせてもらった。きっと、風体の怪しい医者ということで興味を持たれるのだろう。人と付き合うことは嫌いじゃないので間口を広げている。話はそれるが、医療とはすなわち人間学であると僕は考えている。眼前の患者さんを見て、どのような人間で何を求めているのか瞬時に判断し、こちらがどのように振る舞い対応するかも重要である。開業して2万人、その前も合わせると数万人と接してきたから人を見る目には一日の長があると自負している。すぐに分からなくても、付き合いの中で人間性や相性が見えてくるものだ。同業者と異なり異業種の方々には趣味嗜好を求めない。強いて言えば、本業が地に足がついていること、飲食について蘊蓄を語らないこと、人脈を吹聴しないこと、この三点。逆に言えば、自分自身もこれを守って交流を日々楽しんでいる。
僕はSNSをしていない。自分が購入した物品をSNSでひけらかすのは野暮ったい、見も知らない人と幅広く薄く浅く交流する時間がもったいない、と感じているから。リアルな生活が充実(リア充)しているから。もう還暦前なので、これからの目標・目的なんて二の次で、人生を楽しむことが大事だと思っている。芦屋の花火大会、来年も誘ってもらえるだろうか?