僕の心の三冠王
商店建築掲載
今年のプロ野球の話題の一つは、バレンティンのシーズン本塁打記録の更新だろう。飛ぶ統一球問題で水をさされた面はあるが、二位ブランコと19本差の60本を考えると、飛ぶボールはあまり記録更新に関係ないのだろう。残念ながら、打率・打点王は僅差でブランコに譲り三冠王にはならなかった。
今年僕は、自分の心の三冠王になった。自分が直接的に関係した訳ではないので大手を振って自慢できないが、導火線に火を点けたという意味で重要な役目を果たしたと思っている。
何のことかというと、建築のことである。自宅が「新建築住宅特集」04年11月号に、クリニックが「新建築」07年8月号に、そしてこの秋、長嶋鍼灸整骨院風雅が「商店建築」の9月号に掲載された。何れも斯界の一流誌で、何れも建築家千葉学さんに依頼した建築物である。個人の施主で、自宅に仕事場、そして店舗までもが雑誌に取り上げられることは、そうそうないだろう。僕が建築に抱いている思いを、千葉さんが具現化してくれたものへの評価と考えている。
面構え、身構え・心構え、門構え・店構えの言葉があるように、何事においても「かまえ」は重要な因子と僕は考えている。
第一印象の面構えは大事である。顔立ちや体つきの容姿はもちろん、髪型・服装・装飾品など身なり、話し方や立ち振る舞いの所作で、その人のことが大体分かるようなになった。亀の甲より歳の功、第一印象が変わることは以前より大分少なくなった。人の振り見て我が振り直せ、面構えの自己評価は、一言、胡散臭いである。
身構え・心構えは、今の自分にとって、最も戒めなければならないことである。危機管理は、個人として、家長として、経営者として、そして医師として、常に意識しなければならない。僕の好きな言葉の一つに「先憂後楽」がある。お金は払えば無くなるが、注意はいくら払っても無くならない。責任ある立場になればなるほど、払った分だけ返ってくることを実感している今日この頃である。
最後に、門構え・店構えである。モノを買う時、飲食をする時、僕が重要視するのがこの構えである。新しいものでなくていい、お金をかけた豪華なものでなくていい、経営者のこだわりが感じられる店構えのお店を選ぶようにしている。この選択方法で裏切られたことはまずない。
美容院・飲食店と異なり、建築において保守的なのが医業である。当地でも新規開業が年に1件はある。近頃は、建築家に医院建築を依頼する施主も大分増えたが、依頼するハウスメーカーや建築家が同じためか、何処か似通っていて施主の個性が希薄化しているように思う。以前、若き経営者にその点を聞いたところ、「医院建築に慣れた建築家を選びました。」との返事だった。唯一無二の築城を、経験の有無に求めていいのだろうか。
当クリニックは、千葉さんが初めて手がけた医院である。悪戦苦闘・試行錯誤ながらの設計だったが、施主と建築家に共通した意識は、「自身が行きたくなるクリニック」を創ろうであった。頑張った甲斐があり、今年、彰国社のディテール3月号 別冊「医院建築の計画と設計事例」関根裕司編書にも当院が掲載された。
何も誇れるもののない自分にとって、数少ないプチ自慢をさせてもらった。とともに、いつも感じるのは、両親から受けた影響の大きさである。今年もまた、母の亡くなった秋の到来である。