院長のコラム

再び、京都着物旅行

花より団子

母親の形見を活かすべく和装の世界に足先を突っ込んでみたが、学べば学ぶほど果てしない奥深さを知る。結城紬は、軽自動車1台がゆうに買えるくらい高価である。しかし、いくら高くても普段着もしくは会食や同窓会等の身近な集まりにしか着られないそうだ。結婚式等の正式な場では、10分の1の価格の訪問着の方が正装になるらしい。同じ着物なのにと考えるが、50万以上のビンテージデニムと5万のタキシードスーツ、どちらがフォーマルかと問われれば自明の理であるのと同じだそうだ。

高価なものを仕立てたので極力着るよう僕は努めているが、妻はほとんど着る機会がないのが実情である。1年以上畳紙にくるまれている着物を見かねたのか、呉服店の店長が花見会と称した京都での新作展示会に招待してくれた。顧客というわけではないが、クリーニングやメインテナンス等で何かとお願いすることがあるし、今回たまたま当地からの参加者がいなかったので、枯れ木も山の賑わい白羽の矢が立った。折角なので夫婦で久しぶりに着物を着ることにした。
京都に先に行く店長に夫婦の着物を託し、展示会場で着つけてもらった。当日の夜は、呉服店社長の行きつけの料亭の2階で10人程度の会食、翌朝は展示会での見学の後、京都の老舗料亭で団体での昼懐石だった。1泊2日の小旅行で強く感じたことが二つあった。

一つは、着物を着て集うだけで心の障壁が低くなるということである。民族衣装なのに着ているだけで仰々しく見られ、ましてや男が着ていれば、お茶の先生か芸術家にみなされる。日本人に一番似合う衣類なのに、極少数派いやもはや絶滅危惧種化している和装文化である。様々な障害困難があるにも関わらず、着物を着る行為を享受している同士の集まりなので話は早い。初対面でも異性でも年上でも、もちろん職業に関わらず直ぐに打ち解けられる。お金に替えられない貴重な時を過ごせた。
一方、もう一つは残念に思ったことである。馴染みの呉服店の新作展示会への招待、それを我々の業界に換言すれば、交通費・宿泊費丸抱えの研究会への案内である。すなわち、選ばれし顧客の特権なのである。お金を出すから興味があるからという単純動機ではお声がかからない。時間とお金、何よりも長期にわたる信頼がなければ成立しない関係の上に成り立っている。呉服店の年に一度の日頃のご愛顧を込めた新作展示会の服装規定は言うまでもない、と思っていたが、時と場所と場合を読めない方がいたのには憤懣やるせなかった。

帰りの列車を待つ間に時間があったので、時間つぶしのためジェイアール京都伊勢丹に立ち寄った。僕は僕で真夏に最適のヨウジの花柄のショートパンツを、妻は妻でビルケンシュトックとワイズのコラボサンダルを即買した。丸一日の龍宮城のような接待よりも、たった30分の間に購入を決めた商品との出会いに心震えた。花(着物)より団子(ワイズ)を実感した小旅行であった。

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