君に会いに行くよ
長い付き合いになりました。
THE BOOMの「星のラブレター」の一節である。不思議な縁の二人に、先週末と今週末会いに行く。二人とも、父が病に倒れ、そして亡くなったことがきっかけで巡り合った。あれから十四年余り、まだお付き合いさせていただいている。父の祈りか導きか、今後も続いていくことをひたすら願う。
一人は、作家の古畑雅規さんである。先週末、2年ぶりに阪神百貨店での個展が開催された。古畑さんは、作家でかつ大学教授にも関わらず、個展には必ずといって言いほど時間を割いて来場される。京阪神での個展の連絡があれば僕は馳せ参じ、その夜は画商とともに旧交を温めて来た。今回は、初めて夫婦で会いに行った。
初個展の若き作家、父を亡くしたばかりの傷心の勤務医、初のお抱え作家の個展を開催する画商、何の脈絡もない人間が札幌三越に集った。「美術世界では異端な作家なので、初個展が最後の個展になると思って挑みました。」と、酔うといつも画商は本気半分冗談半分で話す。
以来、古畑さんは着々と百貨店での個展を積み重ね、今や号単価は倍になり、「美術市場」に掲載される作家となった。僕としては、もっと上がってもいいかなと思うのだが、「作家は早逝するか、長く生きるかのどちらかです。古畑もここまで生きたら、あとは長生きするしかありません。」と、作家を目の前にして笑い飛ばす画商。ああ、何て人生は楽しいかな、と思える瞬間である。
もう一人は、建築家の千葉学さんである。今週末、案件の進捗状況確認のため東京に会いに行く。
30歳になったばかりの僕は大志を抱いて北海道から上京したが、父が病に倒れたため東京での研修を早々に打ち切らざるを得なくなった。結婚もして子供も出来ていたので、少し早いけれども終の棲家に辿り着いたか、30歳で早くも年貢の納め時か、と万感胸に迫る思いで手に取ったのが99年12/1発売の雑誌ブルータスであった。タイトルは、「東京23区に家を建てられますか? 小さくてわがままな家 「センセイ」じゃない建築家リスト付」であった。折角の終の棲家なら建築家にお願いしてみようか、とその雑誌を貪るように読んで自分なりに選択したのが千葉さんだった。当時は東大の助手で、まだユニットで活動していた。
その後、千葉さんは独立するとともに、東大講師、助教授・准教授、そして昨年末には教授に就任された。ある意味、日本の建築学会の王道を歩んでいる方である。その方に、自宅・クリニック・店舗まで設計管理してもらった。
着々と自分の世界の階段を登っている二人。二人とも、登る高さや速度、到達する目標は全く異なるが、まだまだお付き合いさせてもらっていることから考えれば、どうにか二人の背中を遠く見られる程度に僕も進歩しているのだろう。これからも、二人から離されないよう歩んで行こう、と心新たにしている。
ところで、父親が縁で繋がった二人に、二週続けて会いに行くようなことは今までになかった。これは何かの予兆なのか、それとも父からのお告げなのだろうか、平成26年には何かが起きる予感がしている。