院長のコラム

大河ドラマ「麒麟がくる」


NHKの朝ドラと言うと、幼い頃の印象が強く「年配者のためのドラマ」と感じていた。朝八時十五分と言えば、もう既に学生は登校、社会人は出勤している時刻である。したがってもっと言うなら、家族を送り出した専業主婦のための番組と思っていた。妻はよく見ていたようだが、勤務医だった僕は、土曜や祝日昼の再放送で見る程度だった。連続もの故、内容が全く分からないため面白いと感じたことはなかった。唯一、「あまちゃん」は初見でも小気味よかった。それが、「半分、青い。」以降、朝ドラは我が家の生活になくてはならないものになっている。録画が容易になったことも要因だが、一番の要因は子育てが一段落し心に余裕が出来たことと考えている。

NHK大河ドラマも朝ドラ同様抵抗があった。日曜夜八時と言えば、夕食を終えて翌日の英気を養うべく最も寛いでいる時間帯である。何も考えなくて済むバラエティ番組を見つつ、うたた寝をするのが習慣だった。そもそも、歴史物に興味がない。だから、大好きな宮藤官九郎脚本の「いだてん〜東京オリムピック噺〜」が大河ドラマに決定した時は、「とうとう、(俺も)大河デビューかぁ。」と意気込んだ。けれども、話半ばでいつの間にかフェードアウトしてしまった。理由は未だよく分からない。「録画しているから、後で見よう。」が積もりに積もって、結局見る機会を失ってしまった。

「麒麟がくる」は明智光秀が主人公の物語である。明智光秀と言えば、主君である織田信長を討ち天下統一の夢を打ち砕いた謀反人というイメージしかなかった。その光秀を、僕が最も気になっている男優・長谷川博己が演じるのだ。長谷川博己が光秀をどう演じるのか興味があり大河を見始めた。驚嘆したのは、織田信長役が染谷将太だったことである。信長と言うと比較的長身で精悍なイメージを抱いていたが、今回の染谷信長は対極にあり意外だった。中盤から、本能寺の変というクライマックスに向けて二人の関係性を中心に物語が描かれていった。「なぜ、光秀は信長を討たなければならなかったのか?」という最大の疑問に対して、なるほどと唸らされる見事な脚本だった。様々な歴史認識があることは承知している。織田信長を戦国の英雄と捉えるか、なりふり構わない独裁者と捉えるかで認識は正反対になる。史実に基づき新たな光秀像が提示されたことは、歴史オンチの僕にとって新鮮に感じた。また、光秀が生きていることを暗示する最後のシーンを見た時、万感胸に迫ってきた。最期まで見切った初大河であること、次週から楽しみが一つ減るためである。「青天を衝け」はロスを補ってくれるだろうか?

今回、改めて長谷川博己という役者の凄みを知ったような気がする。個性が前面にも全面にも出てくることはなく、光秀を演じているというよりも光秀にしか映らないのだ。朝ドラ「まんぷく」の時もそうである。日清食品の創業者・安藤百福を題材にしたドラマなのだが、「安藤百福ってこんな人だったのだろうなぁ。」という想像通りの萬平さんだった。朝ドラ、大河と国民的ドラマで人気を博した彼なので、出演料の高騰で出演ドラマは大分狭まったに違いない。彼のことなので傲ることはないと信じているが、また彼に会える日を楽しみにしている。それと今回、長谷川光秀と同様、絶妙だったのが染谷信長である。当初違和感を覚えたが、無邪気さと狂気さを兼ね備えた彼の無表情は、何時しか僕の中の信長像になっていた。

大河ドラマという食わず嫌いを、このコロナ禍に克服することが出来た。まだまだ楽しいことは山ほどあるのだろう。

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