宴の後
今回の青山本店でのコレクションはパリメンズコレクション公式日程に組み込まれていて、パリ時間の5:30、日本時間の深夜に全世界に向けて発信されることになっていた。1回目と2回目どちらが配信されるのだろう、期待に胸を膨らませた。とは言うものの、本店でのコレクション後、ホテルに着いて食事を摂ったら慣れない旅の疲れで早々に眠ってしまった。翌朝、配信された画像を確認したが、残念ながら正式に発表されたのは2回目のもので、フロントローに陣取る我々夫婦の画像はそこになかった。けれども、映像に映る光景を体験したことは事実で何とも感慨深く、そこにいたことに不思議な感覚を覚えた。
1月21日、帰りの便は夕刻だった。取り置いていた商品もあり、また表敬訪問を兼ねてコレクションが行われた青山本店を訪れた。ランウェイを模した白色のペイントは残っていたものの、昨日の出来事が嘘のようにいつもの本店に戻っていた。出勤してきたばかりの店長さんに色々なことを聞いてみた。2回に分かれたコレクションの1回目は顧客が中心、2回目は芸能人やプレス関係者が中心だったとのこと。コレクション終了後は、パーティ気分はどこ吹く風、撮影の編集や後片付け等でバタバタしていたとのこと。これは僕と同意見で、登場した俳優さんの存在が一際目立って、若手モデルの印象がやや希薄になったことは否めなかったようだ。春夏物が展示されていたけれども、僕が気になっているものはまだ先の納期で、気になっていたアクセサリーを購入して店を後にした。
おそらく、人生最初で最後のパリコレ(正確に言えば、パリでするものを日本で行った)を経験した。映像でゆっくり見るのとは違って、想像以上に目の前を次々にモデルが歩いて行く。まさに目が泳ぐ状態で焦点が定まらない。ランウェイと交差して座っているため、斜め横から見ることが多く案外に全体像が把握出来なかった。とはいうものの、配信される映像では伝わらないもの、コレクション直前の静寂、コレクション中の張り詰めた緊張感、モデルが歩くことによって起こる空気感、纏っている着物が揺れ動く生地の風合い、コレクションをサポートするバックグランドミュージックの音量、デザイナーが挨拶に登場するまでの期待感などをライブで経験することが出来た。COVID-19が起きて、弊害ばかりで良い事はほとんどなかった。今回のイベントは、新型コロナウィルス感染症による数少ない恩恵となった。
今回のコレクションは、内容はともかく様々な意味で歴史に残るコレクションになったと感じている。オミクロン株が蔓延する中での観客を入れたショー、日本を代表するデザイナーが東京、しかも本店で初めて開催したコレクション。しかも、渋い俳優が五人も登場。伝説に残るコレクションに参加出来たことは望外の喜びである。ところで、ヨウジヤマモト公式のyou tubeでは現在、全世界に同時配信したものとは別に、version.2として1回目のものも配信している。こちらを見てびっくり、案外我が姿が写っている。 もっとビックリしたのは、「ええっ!こんなにも白髪だったの?」、自分が思っていた以上に銀髪を呈していた。伝説のコレクションという宴を終えた後、自分の白髪具合を思い知らされることになった。「(三十年前の服を着ていても)やっぱり、三十年経ったんだ。」、玉手箱を開けた浦島太郎の話を思い出した。夢はいつまでも続かない。