川崎鷹也
当院の取り組みの一つに音楽がある。「内視鏡という患者さんに苦痛を強いる検査に少しでもリラックス効果を」という願いを込めて、1階の受付・待合室にはUSENを、2階の内視鏡室はアップルミュージックのサブスクを常時流している。USENの選曲は受付スタッフに一任、内視鏡室はサブスクがアトランダムに選曲してくれている。少し前、サブスクで頻回に流れ、やけに耳に残る曲があった。「アラジンのように魔法の絨毯に乗って 迎えに行くよう 魔法は使えないけど お金もないし力もないし地位も名誉もないけど 君のこと守りたいんだ」という歌詞だった。曲名も分からなければミュージシャン名も分からない。「あぁ、こんな曲が今流行っているんだ。」程度でずっと聴き流していた。
この曲が気になりだしてしばらく、NHKの夜ドラで「褒めるひと褒められるひと」という寝る前に最適な能天気で見られるドラマがあった。ヒロインを褒める男優は初見、飄々として実直なサラリーマン役に適役だった。男優名は川崎鷹也、気になって調べてみたら実はシンガーソングライターとのこと。あのアラジンの曲は「魔法の絨毯」という曲名で、彼が作詞・作曲していることが分かり驚いた。さらに調べていたら、何と9月24日、日曜日に紀南文化会館に来るという情報が出たばかり。「魔法の絨毯」とドラマで演じる坂東さんのイメージが妙にリンクして興味を持った。「地元だから誰か彼か声をかければ来てくれるだろう。」とチケットぴあでチケット4枚をポチッとしたら余裕でゲット出来た。後から知ったけれど全く余裕などなかったそうだ。田辺市教育委員会が後援していて既に学生に浸透していたからか、教育委員会支援によりチケット代が他の地域より割安に設定されていたからか、早々に完売していたようだ。タイミングってつくづく大事だと認識した。
後日、ファミリーマートで発券してびっくり。い列17から20番の席、すなわち2列目のほぼ中央席だった。何度か参加した地元文化会館でのイベント、「同じ轍は踏むまい!」と用意周到で当日臨んだ。案の定、文化会館前の駐車場は大渋滞。今回はいつもと随分様相が異なった。公演開始30分前に、見たことのない行列が会館入口前に出来ていた。しかも、「田辺ってこんなに若者がいたんだぁ。」と感心するくらいの人出。2列目の席は、すぐそこに舞台があり川崎君(敢えてそう呼ばせてもらう)の息遣いが聞こえてきそう。歌は聴き込まなかったけれど、セットリストを予習していたので流れは大体理解。開演を心待ちにしたが、定刻になってもうんともすんとも始まらない。「ええっ、こんな田舎で時間押し?ひょっとして飛行機が飛ばずにJRもしくは車で移動変更したから?」、海岸沿いの丘陵地にある南紀白浜空港は海からの横風であおられることがあり、場合によっては羽田に引き返したり関西空港に着陸することもある。何のアナウンスもないまま時間ばかり過ぎていった。