忘れられない映画
時をかける少女
このコラムを見てくれている方は、僕の事を洋服好きな、建築マニアの、レクサス狂信者だと思っている方が大半だと思います。ある意味否定はできませんが、本を読みもすれば映画も観ます。しかし、最近はほとんど映画を観なくなりました。映画館に行ったのはもう大分前のような、「マトリックスレボリューション」が最後だったかも。田辺地域は都会と較べて限られた作品しか観られませんし、DVDで観ようと思っても僕のような自堕落な人間は新作時期に借りることなど到底できません。何度観ないまま返却したことか。
以前は、好きな映画作品をレーザーディスクで購入していたので、好きな作品を挙げれば10作品はあるでしょうか。その中でも一番忘れられない印象的な作品が大林宣彦監督、原田知世主演の「時をかける少女」です。時々観直しますが、初めて観た時の衝撃は全くよみがえって来ず、こんな感じだったっけ?とその度に首をかしげています。
当時僕は高校2年生でした。薬師丸ひろこのファンで、「セーラー服と機関銃」のあとの待ちに待った「探偵物語」を、もう今はなくなった田辺市にあるトキワ座へ観に行きました。当時薬師丸ひろこは人気の絶頂にあり、映画館に相当並んだのを覚えています。その時の同時上映作品が「時をかける少女」でした。僕は、好きなものは後で食べる主義なので、もちろん先に「時をかける少女」を観ることにしました。画面は少しセピアのかかったようなレトロな色調で、松任谷正隆さんのゆったりした音楽が流れ、古式ゆかしい家屋や街並が郷愁を誘います。内容は観ていただくとして、簡単に一言で言うなら「タイムトラベラー」ものになります。話が進むにつれ、「えっ、何、この展開、うそ!」どんどん引き込まれて行きます。圧巻は最後15分で、印象的なきれいな画面とともに怒濤の展開がこれでもかと続いていきます。映画の終了とともに、ユーミン作詞作曲の「時をかける少女」が映画のメーキングフィルムとともに流れてきて不思議な余韻を醸し出すのです。
どうして僕はこんなに「時をかける少女」に感動したのか。結ばれることのない時を超えた愛をテーマに、原田知世の初々しい演技、尾道を中心とした何処かで見たことのあるような懐かしい風景、松任谷正隆さんの素晴らしい映画音楽、ユーミンの映画にフィットした素敵な主題歌、大林宣彦監督の琴線にじわーっと訴えかけてくる演出やそれまでに観たことのなかった映像。何よりも重要なのは、自分自身が青春と呼ばれる無垢で多感な時期を生きていたことだと思います。様々な要素が絡み合い、共鳴して、僕の心に深く刻み込まれました。
もちろん、その後の「探偵物語」はほとんどといっていいほど印象に残っていません。退屈な1時間半でした。
アニメのほうも評判がよく、一度観てみたいと思っています。