新春からキョウソウ!
長嶋家の恒例行事の一つに、毎年一月二日、「冬のクリアランスセール」ツアーがある。当初、夫婦二人だったが、子供達が成長するにつれ一人増え一人加わり、ここ二年は長女も参加して家族行事になってしまった。家族旅行参加の打診には消極的なのに、ことセールツアーに関しては「忙しかったら来んでもええよ。」と言っても万難を排して必ず参加してくる。まさに、現金なものである。家族の嗜好はほぼ一致していて、ヨウジヤマモトやワイズを好む傾向にある。特に、最近のヨウジは価格が高騰していて学生ではおいそれとは買えない。セールでも十分に高いが、このツアーを逃すと憧れのブランドを購入することはほぼ絶望的になる。子供達の必死さはよく分かる。僕的には「学生の分際で贅沢な。」と思う節はあるけれども、自身が父にしてもらったことである。自分が施しを受けた以上、しないことは即ち親不孝になってしまう。
一月二日、夜明け前に起床し、セール競争に勝つべく九時半の開店を目指して神戸大丸に向かった。けれども、正規価格で十二分に購入している僕は時間を持て余すだけだった。息子達も案外早く決断していた。買い物に行く度行く程思うのは、我が家の女性陣の決断力のなさである。スタッフに言われるがまま試着して、ああでもないこうでもない、あっちいやこっち、手を変え品を変える。「見てみて!」相談されるが、「自分のことは自分!」と無視を決め込んだ。案の定、予定の二時間を有に超え、次の目的地大阪梅田には午後一時を過ぎて到着した。もはや近隣の駐車場は満杯である。少し離れた頻繁に利用する駐車場も満車である。どうするかすべきか、何もかも決断が大事である。駐車待ちの運転を妻に任せ、男性陣は阪急メンズ館のY-3を目指した。
メンズ館の上りエスカレーター二階脇には行列が出来ていた。その先にはセリーヌがあった。「さすがは、エディ。エディ(・スリマン)がクリエイティブ・ディレクターになったセリーヌには勢いがあるな。」と感心しながらY-3に向かった。店舗に入ろうとしたところ、「すいません。あちらに並んでいただけませんか。」とメンズ館スタッフに指示された先があの行列だった。何年も通ってきたが初めての事態である。行列に並ぶこと二十分、妻から携帯に電話が入った。「もう車を停めて、今買い物しているけど何処で待ち合わせ?」、「まだ買い物できんのよ。並んで待っているから、買い物できたら連絡する。」と僕。結局その後、更に二十五分、店舗前でも四十五分待つことになった。店舗前でずっと中の様子を見ていたが、「これは確かに入場制限をせんと大パニックになるな。」と理解できた。店舗内に陳列しているスニーカーや服はあくまでも参考商品で、客にサイズを聞かれたらその都度バックヤードから商品を取りに行っていた。とにかく試着に時間がかかるのだ。我々家族もなんだかんだ四十五分程度かかり、どうにかこうにか目的の品を購入することが出来た。Y-3では、競争と言うよりも狂騒であった。「Y-3ってこんなに人気あったっけ?」、不思議な気分だった。
その後、阪急百貨店うめだ本店に移動した。ここ五年ほど新春セールに来ているが、今年はとにかく人が多くまさに狂躁状態であった。日本人が多いのは当然、今回は特に中華系の人が多かった。満杯の百貨店の人混みとその熱気、早朝の起床と空腹で失神しそうな僕の顔は、きっと凶相を呈していたことだろう。「来年はもう行かん!」、内心叫び続けていた。新春早々、様々なキョウソウを体感した。はてさて、令和二年はどんな年になることだろう。