院長のコラム

春なのに、医師なのに

今年の冬は、いつにもまして暖冬だった。少し早い春の到来、その後のゴールデンウィークから東京2020へ、日本の雰囲気や空気、景気は良くなるものと誰もが思っていたに違いない。それが、コロナ厄災によって全てが変わった。我々を取り巻く世界がすべて変わった。第二次世界大戦を経験した患者さんが僕に言う。「先生には分からんやろうけども、今の雰囲気は戦時中と同じ感じや。」と。確かに、友人と外食出来ない。気分転換と思っても、プールにも行けない、買い物にも行けない、家族旅行にも行けない。自粛と自制の日々である。気分がそうさせるのだろうか、今年の春は少し肌寒いように感じる。衣替えをしようという気にもならない。真冬に買った最新のヨウジの春夏セットアップは、まだまだクローゼットに眠ったままだ。こうなると、高級腕時計やブランドのバッグを持つ意味や意義は儚い。

COVID-19の最前線では、医療従事者が粉骨砕身頑張っている。また、彼らを支援しようとする動きが沸き起こっている。そんな状況をテレビ画面で見るにつけ、自分自身が情けなくてしようがない。僕も医療従事者の端くれである。なのに、何も出来ない。現場に駆けつけても、感染症と畑違いの内視鏡医に来られても混乱するだけだ。支援物資を送りたいけれども、医療機関である当院でさえマスクや消毒薬が手に入りにくい状況だ。医療崩壊が叫ばれている。感染症の最前線ではマンパワーや物資不足によるものだが、当院では経営的に厳しくなっている。内視鏡検査件数は対前年度比45%減である。愕然とする結果だが、休業要請される職種ではないので収入が絶たれた訳ではない。知人や友人と比較すれば遥かに恵まれている。このような状況で受診されている患者さんに、いつにも増して癌患者が多い。専門的立場から言うと、「胃が痛い」、「血便が出る」こととCOVID-19とは、ほぼ関係がない。感染症に打ち震えて、自身の健康状態を見失うことだけはないようにと願う。

患者が来院して検査をする、当たり前の日々、通常の光景が一変した。「今までの日常って何だったのだろう?」、努力して築き上げてきたものが崩れ落ちていくような感覚である。しかも、砕けないように何か出来ることがあるかと言えば、何も出来ない。ただ、人事を尽くして天命を待つだけである。このような状況ではさすがに、楽観的思考で能動的にはなれない。しかし、意識は変えることが出来る。「検査件数が減った。」と考えれば後ろ向きになってしまうけれども、「開業した頃に戻った。」と気持ちを切り替えれば、原点回帰すれば前向きになれるような気がする。佐野元春の「DOWN TOWN BOY」の歌詞の一節、「すべてをスタートラインにもどしてギヤを入れ直している君」が、今ボクの心のなかで繰り返されている。「ありふれた日常が早く訪れますように!」願い続けよう。

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