河島英五の名曲「時代おくれ」の一節である。似合わぬことは無理をせず行動するため、黙っていても目立ってしまう、これは仕方がない。人の心を見つめつづけたいと常に願っている。けれども、願ってもいないのに、自身が恥じるくらい時代おくれの男になってしまっていたことを痛感させられる出来事があった。

この春、携帯電話を換えざるを得なくなった。確か、携帯電話を買い替えたのが6年ほど前になるだろうか。運転中のハンズフリー通話が出来るよう、Bluetooth機能のついた携帯電話を購入した。以来、携帯電話の進歩は日進月歩であることは知っていたが、自分の携帯電話使用は通話のみになっていった。用件があればすぐに電話をすればいい、小さな文字を打つのが面倒で億劫になった。何よりも、携帯でメールのやり取りをしなければならない人もいない。当時の携帯では、通信で得られる情報は少なくて遅い。したがって、数年前からはパケット通信を止めた。周りがスマホに換えて行っても、何も羨ましくなかった。スマホにする必要性、必然性がないのだから。
ところが、今まで使っていた携帯がこの夏で使えなくなることを知らせるダイレクトメールが、昨年夏頃から頻繁に送られて来るようになった。換える気持ちがなければ、機会もなかったので放置していた。しかし、いよいよ期限も迫り、娘の携帯電話購入、車検を迎える車の買い替えもあり、購入に踏み切らざるを得なくなった。

auショップに行って、びっくり浦島太郎状態である。ワンセグ、お財布携帯、赤外線通信、テザリングなど聞いたことがない様々な機能がついている。各社間の差異は、この理解出来ない機能の有無なので、選びようにも選べない。しかも、無知による疑問だが、携帯自体が無線なのに、なぜWiFi？
妻子がモノ選びをする際、アドバイスを求められたら電光石火のごとく即答するのに、こと携帯選びに関しては、おどおど、あたふた、おろおろ、どぎまぎ、うろうろ、いつもの精彩さを欠き、したがって父親の威厳も何処へやら。息子は、選べないのならデザインで選べと言うが、大きいか中間か、角が四角か丸か、重いか軽いのかの違いだけで、際立った意匠のものなどない。
PCはマックを使用（これも6年以上前のiBook G4）、携帯に音楽をダウンロードする可能性があること、子供達が使いこなしているので分からない時には教えてもらえること、1時間以上ぐだぐだ思案した末、i-phone 4S 16GBを選択することにした。
購入する際、auショップではi-phoneへのデータ移行はしないので、その件で息子と店員さんがやり取りする会話を聞いていたが、？？？？馬の耳に念仏状態であった。

カルチャーショックで父親の心はぼろぼろ状態のところに、息子には3重苦が待ち構えていた。SDだと思っていたメモリーカードが、mini SDだったのだ。それなら、とネットを介して試みたようだが、息子から「この携帯、ネットに繋がっていないですけど、どうしてですか。」と聞かれ、「ごめん、ごめん、メールをしないので、パケット通信を止めてしまったわ。」。
購入した日に早速アマゾンでmini SDを注文した。携帯にアドレスが全くないため、その日は妻にさえ電話をかけられず、電話が来ても誰からの電話か分からず苦労した。2日後mini SDは送られてきたが、今度はデータを移したら文字化けをするとかで、息子は試行錯誤しながら、どうにかこうにかデータを移してくれた。

思わず「持つべきものは友」ではなく、子供と思った。こんなに全面的に迷惑をかけ、しかもその面倒を嫌がらずにしてくれたのが我が子供である。「老いては子に従え」という言葉もしみじみと浮かんできた。とともに、ほどほど時代について行かなければ、「あとの祭り」になることを嫌が応にも知らされた。