院長のコラム

槇原敬之と尾崎豊

「イキる」とは関西でよく使われている言葉。関西以外の地域でそのニュアンスは伝わるだろうか。「調子に乗っていて鬱陶しい」、「格好つけているつもりがダサい」、「偉そうに見せる態度が鼻につく」等、否定的な意味が込められている。芸能人やミュージシャンの覚醒剤所持逮捕のニュースを聞くたび、「ナニ、イキってるん、アホやなぁ。」と思ってきた。まことしやかに語られる芸能界と裏社会、市井に普通に生きていれば覚醒剤なんてどうやって入手していいか分からない。やはり、芸能界は容易に入手しやすい環境にあるのだろうか。華やかな世界が故に浮き沈みの激しい業界。相当なストレスに曝露されるのは理解出来る。創作活動を持続させるモチベーションやインスピレーションだって、いつかは枯渇する。だからと言って違法薬物に手を出して良い訳では決してない。しかし、こと槇原敬之に関しては、そのニュースが伝わる度に「なぜ、どうして?」ため息しか出ない。

僕が医師になったのは、1991年。当時は、飲みュニケーションの一環にカラオケが浸透し始めていた頃。飲酒しながら流行りの曲をこぞって歌うのが一般的だった。そんななか一世風靡していたのが槇原敬之。覚えやすくキャッチーなメロディーライン。何よりかにより歌詞が素晴らしかった。あの当時でも、字余りの歌詞を無理矢理メロディーに詰め込んで何を歌っているのか分からない曲が多かった。マッキーの曲は一言一句聞き取れた。しかも、日常使いしている言葉を用いて難しい言葉は一切ない。テーマも曲名に一致していて、伝えたいことは歌詞を読めば明々白々。なのに、共感だけで終わるのではなく、そこには普遍性があった。何度も聞いて何度も歌った曲でも、その時の自分の状況や置かれた立場で曲の受け取り方が変わる。20代から聞いているマッキー、50代になっても気付かされることが多い。

作詞において対極にあるのが同世代なら尾崎豊。頭にふつふつ浮かぶ言葉や文章をかきにかき集める。集めた後は逆に、無数にあるワードやテキストを削いで削いで削ぎまくる。だから、歌詞に脈絡がなく、用いている語句の意味が分からないことも多い。時に難解な言葉が象徴的に使われるのでなおさら理解に苦しむ。だから、尾崎の曲は間接的であり観念的であり宗教的でもある。かたや、マッキー。歌詞の題材は、日常生活に起きる出来事や恋愛模様、人としてのあり様。暮らしの中で常々起こっている誰もが経験している出来事。見過ごしたり、気づいているはずなのに見ないフリしている些細なことに対してスポットライトを当ててアンプリファイし、最後にマッキーの視点で優しさを振りかければ出来る歌詞。だから、マッキーの曲は直接的であり感情的であり現実主義的である。作詞に対して正反対と思えるスタンスなのに、残念ながら二人とも覚醒剤取締法違反で逮捕されている。普遍性を求める姿勢は同じで、尾崎は理想を、マッキーは日々の暮らしに願う。方法論だけが異なるだけなのに、どうしてそこに覚醒剤があったのだろうか。それは偶然だったのか必然だったのか。

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