槇原敬之コンサート(後編)
6月29日は診療日の土曜日。週末開催だからか16時開場、17時開演といつもより早い。ということは、検査の遅延や交通渋滞等の不測の事態を考慮し、遅くともクリニックを13時半には出なければならない。その日のため、1ヶ月前から検査件数を制限した。なのに、受付の手違いで通常通りの検査件数の予約を受けてしまうことに。長年勤めてくれたスタッフが退職したこともあり、クリニック受付は5月からアタフタ状態に突入していた。予約していただいた患者さんに謝罪し検査日を別日に振り分け、コンサートに向けた段取りを整え、当日、どうにかこうにか大阪フェスティバルホールに予定時刻に到着できた。我々四人の席は三階席。だが、第一列目で舞台から見れば中央やや左より、コンサート全体を楽しむには案外にベストポジション。ただし、立って真下を見なければの話で、「ここから落ちたら死ぬかな?」不安が終始つきまとった。
今回のツアー名は、「Makihara Noriyuki Concert 2024 “TIME TRAVELING TOUR” 2nd Season 〜Yesterday Once More〜」。コンサートに来てくれた方に、かつての思い出を呼び起こし“タイムトラベル”を楽しんでもらおうと企画された第二弾(第一弾は2018年)。本人曰く、今回は特に1990年代がテーマになっていて、おなじみの曲からマニアックな曲まで90年代を中心に選曲したとのこと。ライブは、感動的バラード「ANSWER」から始まり、「いきなりステーキ」くらいぎゅっと懐を鷲掴みされ30年前に引き戻された。実は、今回のツアーでフェスティバルホールは4回目で29日が大阪ファイナル。慣れもあるのか、大阪高槻市出身のマッキーは関西人らしく首尾関西弁、会場のファンからの声援に真摯に応え、その掛け合いはさすがに関西らしく漫才の様相。耳心地の良い楽曲故ついつい見逃しがちになるけれど、マッキーは優れた作詞家であり、実は出色のサウンドクリエーターだ。近頃、ジャンルの異なる種々のアーティストのコンサートに行っているが、ホールコンサートレベルで8人編成のバンドなんて見たことがない。それはつまり、いかにCD音源を忠実にライブに反映させるか実践している証左である。重厚なサウンドと深みのあるボーカルは素晴らしく、耳を澄ませばまるでライブCDを聴いているかのような聴き応え。
三時間弱の長丁場のライブは、槇原敬之ヒット曲メドレーに軽快なMCと飽き(させ)ることなくあっという間だった。少し前頃までは、「優しさ」なんて安易で偽善と思っていた。尾崎豊ではないが「僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない」くらいに思っていた。ところが、人生も中間点を折り返しに入った頃から「人は人、自分は自分」肩肘張らなくなったような気がする。マッキーではないが、「僕が僕らしくあるため『好きなものは好き!』と言えるきもち抱きしめてたい」、昔から較べると少しは素直になったように感じている(家族に言わせれば、それでも相当戦闘的と言われているけれど)。音楽家の道を志したがために引き起こしたと考えられる二度の不祥事。音楽活動を断念する判断もきっとあったに違いない。それでも、かっこ悪く泥臭く這い上がろうとするマッキーに、「ナニ、イキってるん、アホやなぁ。」とは言及できない。今回コンサートに参加してみて、その思いを強くした。二度と同じ過ちを繰り返さないことを願う。そして、マッキーのように自分を必要としてくれる人々のために頑張ろうという思いを新たにした。次は年末かな?