浴衣の季節
和装を楽しむ会のお知らせ
7月3日、台風8号が当地を通過した。梅雨まっただの台風のせいか、7月の第一週目は例年になくじっとりとした、まとわりつくような湿気に襲われた。めまぐるしく変化する雨量の中躊躇したが、誂えたばかりの浴衣をおろすことにした。
一昨年夏から外食する際は、極力浴衣を着るように努めている。仕事を終え帰宅して浴衣に着替える。気心の知れた友人との楽しいひと時を迎えるという高揚感が、浴衣に着替えることでますます高められる。と同時に、オンオフのスイッチも切り替わる。呼んだタクシーに乗り込むや否や「先生、今日は浴衣ですか、やっぱりいいですね浴衣は。」がほとんど第一声である。車中、こちらから話さなくても運転手さんの方から和装について話してくれる。
予約していた店の扉を開けるや否や、店主とスタッフの驚きの表情がうかがえる。次に、「やーどこの歌舞伎役者さんかと思ったら、先生やったんか残念やよ。」と辛口コメントのことが多い。そして、「やっぱり夏は浴衣ですよね。」といつになく会話が弾む。お客さんも同様で、一瞬「こいつ何者?」目線を向けられるが、いつの間にか憧憬の視線に変わることを感じている。というのも、洋装のヨウジヤマモトは、終始、奇異好奇の目を向けられるので、服装に対する他人の視線には相当敏感になった。最初怪訝そうに見られるのは同じだが、和装はいつしか「いいなあ。」「着てみたいな。」の好意的な視線に変わるのだ。自意識過剰と疑われるかもしれないが、この感覚は一度でも和装をしたことのある方なら理解していただけると思う。
今回誂えた浴衣は誉田屋謹製である。誉田屋十代目の当主山口源兵衛氏は、斯界のカリスマだそうだ。氏のことは存じ上げていなかったが、日本画家の松井冬子さんと六本木ヒルズのアートギャラリーで「帯匠 誉田屋源兵衛 × 畫家 松井冬子展 ~畫家・松井冬子キモノ展覽乃會~」を開催したことを知った。松井さんは一度見たら忘れられない強烈な絵を書く方なので、その方とコラボする源兵衛氏は相当なごんたくれであることは想像に難くない。
懇意にしている呉服店店長が、クリーニングに出していた一重の着物を納品の際、社長が先生にお勧めの逸品があるので見るだけでも見て下さい、と反物を持って来た。赤が印象的な意匠に度肝を抜かれた。お勧めと言うよりも、「あんた、着てみなはれ」という挑戦状と僕は受け留めた。想像していた以上に値段もお手頃で、仕立て代込みでヨウジのパンツよりも安かった。
地球温暖化のためだろうか、食べ物も着るものも季節の境界がますます曖昧になってきている昨今、改めて日本人の夏の装いを考えてみたいと思い、浴衣の会を開催することにした。これはあくまでも建前で、単なる飲み会に動機づけをしたかっただけである。
8月2日、興味のある方は気軽に連絡をいただければ幸いです。