海上からの花火大会〜芦屋の花火大会にて(2)〜
夕刻、ヨットハーバーは花火大会目的の人々で徐々に賑わい始めた。おそらく打ち上げ開始時刻の午後7時45分を見越してだろう、まだ陽は高いけれども三々五々ボートは順次港を出て行った。「エッ、もう出るの?」何ゆえと思ったが、海上に出てみて理由が分かった。先ずは目的地までの移動時間、そこでの陣取り合戦、潮芦屋ビーチ前の海上は大小さまざまなおびただしい数のヨットが集まっていた。個人から法人、日本人から外国人、プライベートからビジネスまで各種様々。他船を眺めて思ったのは、夕刻から日没、そして薄暮から打ち上げ開始時間までの一時を海上で飲食を楽しんでいる雰囲気。それはそうだ、端から見れば我々もそうなのだから。陣を張ったら、そこでの長時間停留タイム。ということは、他船との距離を適宜適度に保たなければならない。「どうするんだろう?」不思議に思ったので船長に質問したら、最新のボート機器は優秀だそうで、位置決めしたらGPS機能で自動運転してくれるらしい。
花火大会なんていつ以来だろうか?コロナ禍中に白良浜でシークレット開催された時、もしくは我が家の屋上から遠目にみた田辺市花火大会?忌憚なく言えば、花火大会はあまり好きではない。バーッと花開いてパット散る儚さが妙に切ない。花火大会が終われば夏休みも終盤、楽しみにしていた夏休みが終わる寂しさ。幼少期からの習性で、大小かかわらず花火を見ると「あと何度花火を見られるのだろう?」生きていることを実感し虚しくなる。付け加えるなら、汗だく、人混み、藪蚊がどうしても気を削ぐ。しかし、今回はいままでと違う。幼い頃、海水浴場の正面に位置する旅館から人混みを見下ろしながら花火を見たことが二度ほどある。今回はその時と同じようなプチ優越感に浸れる。しかも、人混みも藪蚊もなければ、海風を感じながらシートに座って、更にはアルコールを堪能しながら観覧できる。ああ、何と幸せなことか。
夜の闇に包まれた頃、六甲山を背景に正面に芦屋市内、右手に芦屋ベイコート倶楽部、左手に六甲アイランドを眺める位置で、潮芦屋ビーチから上げられる花火を満喫した。ビーチで見るのと対照的に、花火の大音量や観客の歓声等、迫力や臨場感にかけていたかもしれない。けれども、それを補ってあり余る極上の環境が海上にあった。ホテルに帰ってきた際、エレベーターに同乗した方から「花火見た?今年の花火は近年になく良かったわ。」とリピーターから声が上がるくらいなので、きっと盛大な花火大会だったのだろう。不安は的中することなく、船酔いせず尿意も催さなかった。むしろ、飲酒量がすすんだくらい。圧巻の花火大会が終わったのもつかの間、往きと違って帰りが大変。ヨットハーバーから出港したボートが一斉に帰港してくる。しかも、日中とは風景が全く異なり、他船との間隔が掴みづらく、防波堤もうっすらとしか見えない。医師らしいO船長の慎重な操縦で無事帰ってくることができた。