四十過ぎた頃から、急激な体力の衰えと基礎代謝の低下を感じていた。食生活はあまり変わらないのに体重は徐々に増えていった。少し食事量を減らして運動すれば改善していたお腹まわりの贅肉も、ついたままで現在に至っている。運動をしなければならないとは思っていたが、ロードバイク、ランニング、ウオーキング、どれも長続きしなかった。飽き性の自分に適する運動はない、と半ば諦めていた。しかし、2年前から始めたスイミングは、最低でも週1回のペースで続いている。きっかけはスポーツジムスタッフの来院であった。スポーツジムへの入会を何度も考えたが、行く回数と費用対効果を考えると躊躇せざるを得なかった。けれども、「パンフレットを置かせてください。」と手に取ったパンフレットを見たところ、そのスポーツジムはチケット制を導入していた。これなら行った分だけなので実利が一致している。興味本位、物見遊山でジム通いを始めた。
通い始めの頃はマシーンを使っての筋トレとランニングをしていたが、翌日の筋肉痛と関節痛に悩まされた。しばらくトレーニングをしていたら体が順応するだろうと考えていたが、一向に適応すること無くむしろ日常診療に支障を来すようになった。スイミングに対しては、当時相当な抵抗感があった。なまくらな体を曝す厚顔無恥さと、高校時代、居残りクロール訓練をさせられたトラウマがあった。折角購入したチケットなので捨てるわけにいかず、恥を承知の上で泳いでみた。すると何と心地がいいのだろう、全身の疲労感はあったが局所の痛みは全くなかった。
以来、スイミングを日常生活における適度な運動の中心に据えている。恰好はどうでもいい、速さを求めない、とにかく長距離泳ぎ続けることを目標にした。簡単なようで、これがなかなかうまく行かない。横15mのプールを一往復するだけで息も絶え絶え、泳いでいるのか溺れているのか分からない醜態をさらした。一往復が限界なので、当初、一往復の泳ぎと一往復の歩行を一つのセットにして20セットを課した。徐々に慣れるにつれて泳ぐ時間が短縮され、こなすセット数は増して行った。けれども、連続で泳ぐのは5往復が精一杯だった。隣のレーンで泳いでいる人のフォームを実際に見て、ネットで勉強し、ユーチューブを参考にしたが、神様はいつまでも降りて来なかった。
1年経った昨年夏、腕の振りと蹴りのバランスが悪いのでは、とふと頭をよぎった。試しに一かき一蹴りのいわゆるツービートを試してみたところ、まさに水があったのか見る見るうちに泳げるようになった。今では1時間休むこと無く泳ぎ続けられる。
大腸内視鏡検査に取り組み始めた頃もスイミングと同じだった。本を読み先輩の検査を見て取り組んだが、一向に盲腸まで到達出来なかった。自分にはセンスがないと自信を失いそうになったが、諦めず継続し、試行錯誤を繰り返したある日、突然閃いた。悩んでいたのが嘘のように挿入出来るようになった。
何事もそうだが、自分のスタイルを体得するまで、投げ出さず、諦めず、慌てず、努力し続けることが重要である。
この春、全く異なる新たな分野への取り組みを始めた。いつの日かこのコラムで報告出来るくらいになれるだろうか。 |