院長のコラム

熊野古道なかへち美術館

2013.11.10

SANAAに会いに行く

田辺市には知る人ぞ知る美術館がある。市街地から国道311号を車で1時間ほど走らせると、山間部を縫うがごとく続く単調な光景が、トンネルを抜けるとぱっと広がる平地が目に飛び込んでくる。その美術館は、近露と呼ばれる地域の川の畔にそっと佇んでいる。旧中辺路町の公立美術館として開館したが、現在は、市町村合併を機に田辺市立美術館の分館となっている。

熊野古道なかへち美術館は、妹島和世さんと西沢立衛さんの建築家ユニット「SANAA」が最初に手がけた美術館である。建築に興味のない方にはピンとこないかもしれないが、後に建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞することになる二人の原点となる美術館、と言えば有り難みは倍返しどころではない。
開館に携わった旧中辺路町長、現田辺市長の真砂さんと話す機会がありその点を聞いたところ、広告代理店が仲介してくれたようなことを話されていた。経緯はどうあれ、和歌山の山間部にある小さな美術館が、その後の金沢21世紀美術館、ニューヨークのニューミュージアム、ルーブル・ランスへ続くと考えると、まさに田辺市にとってお宝物の美術館である。先見の明とは、まさにこのことである。

今秋、なかへち美術館開館15周年を記念してSANAA展が開催されている。その目玉が11月2日に行われた二人のミュージアムトークである。国際的に活躍されている二人が、わざわざ和歌山の僻地に足を運んでくれる機会は最後だろう、そう思っていたものの応募に間に合わなかった。建築関係に知り合いがいるので、何とかなるだろうと高をくくっていたのも確かである。応募終了後、各方面に連絡したが後の祭だった。県内外から多数の応募があり、割って入る余地は寸分もなかった。しかし、諦めていたところへ天の声である。夫婦で行くつもりだった知人が、奥さんの分を僕に回してくれた。

ミュージアムトークは、なかへち美術館以降の建築物、美術館を中心に建築経緯や概念、特徴について自らの言葉で語ってくれた。僕には二人の印象が対照的に映った。観念的と現実的、曖昧模糊と理路整然、情熱と冷静、もちろん女と男である。このユニットは、互いを補完しつつ互いの才能を相乗効果的に高め合っているように感じた。
以前は建築に興味あったが、自宅も仕事場も建て終えた現在、一般誌をさっと眺めるくらいの初心者の戯言と理解してもらいたいのだが、SANAAの建築を見た印象は、「抜け感」「透明感」「白」という言葉が浮かんだ。そして、それらが組み合わされた建築物に、自然との調和を重んじる日本的なものを感じずにはいられなかった。二人のトークが1時間、質問コーナーも混じえて1時間半ほどの講演会だったが、大変有意義で貴重な時間になった。

今回の講演会に参加して、びっくりすることがあった。最初は全く気づかなかったが、講演途中から司会進行者(学芸長?いや館長かもしれません)に見覚えがあるような気がしてきて、終了間際になってやっと思い出した。何と、高校の英語の恩師ではないか。公演終了後、写真を撮ろうとSANAAの二人に皆が近づくのに、僕だけが恩師に近寄って行った。三十年ぶりの出会いである。SANAAとの出会いもそうだが、恩師との再会も奇遇であった。不思議な一日になった。

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