田辺のスタンプ
現アメリカ合衆国大統領は、元不動産王ドナルド・トランプ氏である。トランプ氏の歯に衣着せぬ言動から、僕は一時期、田辺のトランプと呼ばれていたことがある。最近は周囲からスタンプ王と呼ばれている。もちろん、不動産や財産を持っているからではない。LINEの有料スタンプを数多く持ち駆使しているからである。
従来、メールのやり取りはパソコンだけで行っていた。携帯電話でメールのやり取りをする必要性がなかった。文字を打つくらいなら電話をした方が早く、返信を待つ必要もないので要件も直ぐに済ませることができる。携帯でメールするのは時間の無駄とさえ思っていた。しかし、長男が大学に進学して何かと連絡のやり取りをしなければならなくなった。長年使い続けた携帯電話をiPhone6sに機種変更したのもあり、長男からLINEを勧められた。LINEをSNSの一種と思っていた僕には相当抵抗感があったが、「メールのやり取りに限定すれば、」の一言でアプリをダウンロードすることになった。ダウンロードするや否や、友達があっという間に百人を越えた。何と、携帯電話に登録されていた人が、ほぼそのままLINEの友達に自動的に移行されたのだ。メールアドレスをいちいち入力しなくてもいいので、これは大変便利である。
しばらくは、音声もしくは文字入力だけの、まさしくメールツールとしてのみ使っていた。何人かとやり取りするうちに、スタンプという絵文字があることを理解した。文章に絵文字を添えるだけで心がホワッとして伝わり方が随分異なるように思えたので、無料スタンプのダウンロードの仕方を教わった。無料スタンプはすなわち企業広告の一種なので、友達登録すれば何時でも何度でも無数にLINE連絡が来る、これには辟易した。同じように悩んでいた人間がたくさんいたが明確な答えがなく、手数の少ないままLINEをあまり楽しめないでいた。ある時、門前薬局の薬剤師さんに相談したところ、広告LINEをブロックする方法を教えてもらえた。これ以降、発情した猿のごとく無料LINEスタンプをダウンロードしまくった。ようやく、LINEで人とつながる楽しさが分かり始めた。
最近、LINEのやり取りはチキンレースのような気がしている。相手のスタンプに対して、どのような意趣返しをするか、内容も含めて問われているように感じている。相手がこの絵文字で来れば、こちらはこう動く、酔って帰ってきてLINEの通知が入っていれば、相手によっては埒が明かない。風呂に入るまでLINE合戦である。手持ちのスタンプが多いほど優位に立てる。眠る前の一時、人と繋がっていることが妙に嬉しい今日此の頃だ。