男のアクセサリー
新型コロナウィルスの感染者が世界的に増加している。和歌山県も初期に感染例が多数報告されたため、県外の知人に電話連絡すると必ず「ところで、長嶋さん大丈夫ですか?新型ウィルスは?」と質問された。「田辺から離れた県北の話ですし、局所的なので全く心配ありません。」と苦笑いしながら答えた。和歌山県は初動が奏功したのか、その後感染の拡大は見られていない。逆に不思議なのは、人口が多く外国人観光客も多い大阪や京都での報告例が少ないことだ。このまま収束することを祈るばかりだ。
先週末、講演会出席のため上京する予定だった。夫婦ともども東京で所用があり、二人で上京することにしていた。ところが、五日前になって製薬会社から「このご時世ですから講演会は中止になりました。」と報告を受けた。僕の往復運賃と宿泊費は製薬会社持ちであった。妻の分はもちろん自腹なので、往復早割チケットを既に購入していた。上京を断念するかどうか迷うところだったが、先方には以前から上京することを伝えていたため、急遽自分の航空機チケットと宿泊先を手配しなければならなくなった。
ヨウジヤマモトでは、以前からシルバーのブレスレットやリング、チェーン等のアクセサリー類も展開されていて、気に入ったものをちょこちょこ購入していた。けれども、時々着けてはみたもののどうも落ち着かない。薄っぺらさ、いわゆるチャラさを感じずにいられなかった。四十代前半の話である。以来、購入したアクセサリーはボックスの中に封印していた。あれから約十年、次男が大学生になるやいなや、「アクセサリー見せてよ。ええもん持っているんやろ。」とアクセサリーボックスを漁っては持っていくようになった。「どうせ、せんのやろ(使用しない)。もったいないから使ってあげるわ。」と次男、「あかんあかん、使うで。」と僕。以後、持っていかれるのが嫌で成り行き上、時計以外のアクセサリーを身に着けるようになった。四十代と異なり、これが意外としっくり来るのだ。故に最近、プライベートで出かける前には、アクセサリー選びが必須になっている。
コムデギャルソンは、日本が誇るファッションブランドである。川久保玲さんは、そこに居続けることを良しとしない常に進化し続ける、いわゆるアバンギャルドなデザイナーである。方やミキモトはパールを中心とした老舗のジュエラーで、クラシックかつオーソドックスにしてエレガントなイメージがある。ある意味対極にあると思われるこの両ブランドが、今春から二年間の予定でコラボすることになったのだ。今回の上京の目的の一つは、その全ての商品が一堂に会する銀座ミキモト本店を訪れることだった。この両ブランドがコラボすることは革新的であり破壊的であると僕は感じていたので、コムデギャルソンは正直好みではないけれども、この商品は一見の価値があると判断した。ミキモト本店は何度か訪問したことがあり、前もって来訪を告げていたので快く対応してくれた。勧められたが、さすがに数百万円もする白蝶真珠をまとうのは憚られ、アコヤ真珠のものを試させてもらった。「男にパール?」自身懐疑的であったが、あらあらなんとしっくりくるではないか。従来の価値観が崩壊していくのを感じた。とほほ、値段もなかなかのものだったので検討することにした。
年をとるということは、髪の毛が抜け白くなっていくことである。しわもシミも増えることである。即ち、瑞々しさがなくなり枯れていくことである。けれども、枯れていくが所以、調和するものもあることを理解した。若い時に身につけていたアクセサリーはギラギラしていたが、いまやキラキラと輝いている。年をとってもまだまだオシャレでいられる、まだまだ僕は大丈夫だ。新型コロナウィルスの影響でいつもより閑散とした銀座でそんなことを思った。