畏怖堂々(NSX納車記(1))
夢を叶える、子供からの夢、夢を追いかけるという言葉がある。本来、夢とは眠っている間に感じる現象なので、この場合、目標や到達地点という意味を持つ。あるいは、期待や理想という意味も兼ね備えている。何れにしても、現実と乖離していることに変わりない。そういう意味では、今回のNSXの購入は夢にも思っていなかったし、夢を叶えたとも感じていない。母よりも長く生きながらえたこと、五十歳を健康体で迎えられたこと、開業して十年大過なく過ごすことが出来、しかも医療法人化まで出来た。昨年から今年にかけて、今まで積み重ねてきたものが一気に実を結んだような気がしている。NSXの購入もその流れの一環であり、御縁があったように思うし邂逅したとも感じている。
話は変わるが、正直なところ以前は、車にお金をかけるのは愚の骨頂と考えていた。フェラーリやポルシェに乗っていると聞いても全く羨ましくなかったし、むしろ「お金の使い道が分かっていない。」と少し軽蔑さえしていた。今もそうだが、無知で未熟な経営者であったことをただ恥じるばかりである。必要経費、減価償却、車の残価率、経営者たるもの如何にお金を回していくのか(動かしていくか)考えるのも仕事である。お金を儲けた分税金を払うというやり方を九年間続けてきたが、そこここに弊害が出てきた。医療法人化した現在、企業として如何に社会に貢献していくのか、多方面にアンテナを張って物事を進めていかなければならない。NSXを購入することになり、経営者が高級車に乗る理由が少し理解できるようになった。
話は長くなった。当初、九月の十六もしくは十七日に、埼玉からディーラーに車が搬送されてくる予定だった。連休なのでドライブがてら見に行って、ドライブレコーダーとレーダーの設置場所を打ち合わせることにしていた。しかし、あいにくの台風で平日の十九日の到着となった。診療が終わってから和歌山市まで車を走らせるのは困難と判断し、一旦は担当者に一任することにした。けれども、「もし、納得のいかない場所に設置されたらディーラーとの関係が気まずくなる。」との忠告を受け、急遽行くことにした。薄暗くなったディーラー裏の整備場に置かれていたNSXはとてつもないオーラを発していた。間近でみた第一印象は、「こんなん乗れん、運転無理無理。」だった。車高が低いし車幅も広い、何より車と地面との距離がなさ過ぎる。「これ絶対に下こするで。」、契約から一年待った車との初めての出会いは、喜びや嬉しさよりも恐怖心を覚えた。「なんでこんな車買ったんやろ。」、後悔心まで芽生える次第である。長年背の高いSUVしか乗って来なかったし、2ドアのスポーツカーは生まれて初めての経験である。我がマッハ号との初対面は、決して芳しいものではなかった。