発想の転換は頭よりも眼から
眼の衰えは勢いを知らない。食事に行った際、メニューやお品書きまで見えなくなった。しかも、出された料理までもぼやけ何を食べているのかよく分からなくなった。料理は五感で味わうものだが、視覚による演出が大事である。故に、外食の際にも眼鏡が手放せなくなった。財布に携帯電話、そして老眼鏡、いつしか僕の外出の際の三種の神器になってしまった。外食時にカバンを持つことに慣れていない僕は、これら三点セットを片手に持って出かけた。それはすなわち、メガネケースがコンパクトでなければならないことを意味した。
老眼鏡三代目オリバーピープルズは、その点秀逸だった。べっ甲柄のボストン型でクラシック、ケースも茶色のスマートなものであった。頻回に持ち運んでいたためケースの破損が心配になり販売店に問い合わせたところ、眼鏡自体が限定モデルでケース自体もオリジナルのものであった。「困ったなあ。」と思い悩んでいた矢先に出会ったのが、これもオリバーピープルズ、テンプルというメガネのサイドパーツが伸縮するカードウェルというモデルだった。グラス自体が一層コンパクトで、かつ特別のゴールドケースが付属していて非常に満足度の高いモデルだった。このモデルもヘビーユースしたため、販売店に同じものを購入したい旨伝えたところ、「もう生産中止で在庫のみです。」との返答。今年からどうもオリバーピープルズの販売代理店と生産工場が変わったらしく、カードウェルはメイド・イン・ジャパンの日本市場限定モデルだったようだ。半信半疑でネットを調べてみたが、どこも在庫切れの状態である。「強度と精度が要求されるようなモデルは、さすがにメイド・イン・ジャパンやな。」妙に納得した。販売店担当者に「同じようなものがないか調べて、あったら連絡ちょうだい。」と今年始めに投げかけておいた。
今秋、販売店を訪れたところ、担当者から「先生、いいものを見つけましたよ。」と満面の笑みで迎えられた。着る眼鏡をコンセプトにしているEYEVAN(アイヴァン)という会社のEYEVAN7285の800というモデルである。テンプルがスライディングし、かつフォールディング(折り畳み)出来る画期的なモデルである。ケースの厚みは四割ほど増したが、幅が四割ほど狭くなった。こちらのモデルもアルミニウム製のコンパクトなケースが付属している。この秋から、従来のEYEVAN に加えてEYEVAN7285も取り扱いできるようになったため提案できるようになったそうだ。興味本位で調べたところ、アイヴァンはオプティックジャパンから社名変更したらしく、そのオプティックジャパンはかつてオリバーピープルズの日本の販売代理店をしていたようだ。オリバーピープルズのカードウェルからEYEVAN7285の800モデルの流れは、偶然ではなく必然だったに違いない。
両親のこともあり、健康管理には人一倍気をつけている。五十を過ぎて大学生の頃の体重を維持管理している。心意気は、まだまだ若い者には負けまいと意気込んでいる。ファッションだってそうだ。けれども、寂しいかな眼だけは老いを隠せない。悲しいほど近くのものが見えない。どんなに頑張っても、人生の下り坂にいることは否定できない。しかし、それを嘆いていても何も解決は出来ない。今回の一連の出来事で、「老いは楽しむものだ。」と思い直した。「近くのものが見えないなら老眼鏡をかければいいや。折角なら眼鏡をアクセサリーとしてファッションのように愉しめばいいや。」発想の転換が出来たような気がする。このように考えられている間は、まだまだ大丈夫。
老眼四代目オリバーピープルズ
最新老眼モデルEYEVAN7285の800