色気と気品とクルマ
僕の弟がアルファ155に乗っていた。弟の155はあたりが悪かったようで何度も故障した。その都度何十万もの修理代がかかり閉口していた。そのことを聞いていたので、イタリア車のアルファ156は不安だらけだった。けれども、心配をよそに、二度の車検を通して約六年ちょっと乗ることになった。それは即ち、僕の人生で所有期間の最も長い車になった。理由の一つが、車の話題になった際、アルファ156に乗っていることを伝えると、「おっ、通ですね。」という反応が何気に嬉しかった。
二度目の車検を通してから、マイナートラブルがちょこちょこ出始めた。当時、勤務医を辞めて開業するまでの端境期だった。無収入という訳にはいかず、県下各地の病院でパート医師として働いていた。連日、県下を長距離運転しなければならなかった。大きなトラブルはなかったが、七年目のイタリア車に流石に不安を覚えた。買い替えを検討していた時期、心底欲しいと思える車はなく消去法で選んだのが開業したばかりのレクサスIS250だった(まさか、その後、何台ものレクサスに乗ることになろうとは露にも思わなかった)。アルファ156はその後マイナーチェンジし、159へとフルモデルチェンジしたが、初期の面影はどんどん薄れていった。
僕にとって車選びに大切なのは、色気と気品である。レクサスISF、レンジローバー・イヴォーク、ホンダNSX、欲しいと思える車は数々あった。けれども品と色気を兼ね備えた車にはなかなか出会えないでいる。定期的に手洗い洗車をしている経験上、レクサスには、日本刀に通じる美、鍛え抜かれ磨き上げられた、いわゆるエッジの効いた美が宿っているように感じている。確かに品はあるのだが、どこか冷たく無味乾燥的な印象も否めない。三年前、レクサスから2ドアクーペLCが発表された。サイドからリアへ続くボディラインおよびボリューム感には久しぶりに色気を感じた。プロトタイプが発表された頃から真剣に購入を考えていたが時期が悪かった。ホンダNSXを既にオーダーしていた。最近、品と色気を感じた車が三台ある。二台はいずれもマツダで、ロードスターとマツダ3である。セカンドカーとしてロードスターの購入を本気で考えた。しかし、車庫の都合で断念せざるを得なかった。もう一台は秘密にしておく。
余談だが、イタリア人と日本人には共通点があるように僕は感じている。南北に細長い地形、海に囲まれた環境。生活の基本である衣食住においても、独自の服飾文化と世界的に評価されている食文化、歴史的な世界文化遺産等類似点が多いように思う。それを言うならフランスも共通点があるようだが、イタリアと日本、何れも第二次世界大戦時の枢軸国である。すなわち敗戦国、負け組である。ウルスを購入することになり、十数年ぶりのイタリア車購入となった。オーナーになってみて、ランボルギーニ社が日本市場を重要視していることを理解した。それとともに、イタリアに対する興味も湧き上がりつつある。かつて僕の中で花開いたイタリア熱は再び開花するのだろうか。今しばらく、イタリア車を楽しみたい。