親子の口喧嘩から〜まさかの階段落ち(1)〜
それが起こったのは10月14日、月曜正午頃。その朝、夫婦間でつまらぬ諍いがあった。僕がテレビを見ていたら、家事をしながら妻が「うちら不在者投票せなあかんよね。ところで選挙っていつだった?」と問うてきた。今後の日本の行方を占う大事な国政選挙。重大な選挙にもかかわらず投票日が分かっていない。把握していないにもかかわらず不在投票とは、面を食らった。ふと頭に浮かんだことをそのまま言葉に口に出すのは、女性一般的な感覚なのか、それとも妻特有の感覚なのか。疑問に思ったのなら、このご時世、先ずは携帯(電話)で調べれば済む話。ところが、考えもせず、調べもせず、みだりに言葉に発することは如何なものかと感じた。したがって、そのことで妻に少し強い口調でたしなめた。
そんな夫婦の会話を帰省していた長女が洗面所で聞いていたようで、「(ママに対して)そんな態度ならパパに介護が必要になったら、誰も面倒みいへんで!」と問い詰めてきた。こちらは妻にモラハラするつもりなんて毛頭ない。「思慮のない発言は誰も聞いてはくれませんよ。」、妻とは言え責任ある肩書の介護施設長、常々説明し何度も諭してきたこと。「ええっ!些細なことで喧嘩を売ってきたのはそもそも誰?」と思いながら、「ああええわ!看てもらわんで結構!」休日の朝から親子で売り言葉に買い言葉の口喧嘩。この言葉は決して強がりではなく、「いつから年金を貰おうか?」、「どの時点で引退しようか?」自分の老後のことは自分がよく考えている。クリニックに隣接する介護施設も自分が入居するために作ったようなもの。だから、例え家族が面倒を看てくれなくても大丈夫なよう、すでに万全の体制は整えている。
嵐のように帰ってきて嵐のように去っていった娘が大阪に返ってほっと一息。休みの日のルーチンワーク、院長コラムに取りかかろうとリビングから階下へ。右手にコーヒー、左手には2階の踊り場にかけていた昨日穿いたレザーパンツを持って階段を降り始めた。すると、1階で「太鼓の達人」に興じていた三男がフルコンポを出した音声が。両手がふさがっていて、階下左斜めに目をやった瞬間、突如として世界がひっくり返った。高さ60センチくらいから階段を落っこちたようだ。コーヒーがぶちまけられると同時に左脚に激痛が走った。すぐさま、大声で妻を呼んだ。「速くタオルを持って来て!」が第一声。とっさに浮かんだのは自分の身体より、こぼれたコーヒーが絨毯に染みないかどうかだった。激痛の中、次から次に浮かぶのは、「なんで、ナンデ、何で!」、現在の状況に対して、自分の愚かさと情けなさ、注意散漫と傲りに憤りを覚えること仕切り。