進化し続けること
再び画家訪問
作品名「天地創造」
ダリの「ポルトリガトの聖母」に影響を受けた作品だそうです。
3月29日、画家の古畑さんご夫妻と画商の3人がクリニックを訪ねてくれた。依頼していた作品の納入と展示のためである。エキドナをモチーフにした多彩でメルヘンチックな古畑ワールド満載の作品、かたやモノトーンで色調が抑えられた異色作品「animals energy」、完成して間もない作家の転換点と考えられる精神性を追求した「天地創造」の3作品である。画家と画商と相談しながら3点を飾った。クリニックの雰囲気がまた一層華やいだように感じた。
その際、古畑さんから「こんなアンティーク調のソファありましたっけ?」と聞かれた。1年ほど前から、ラウンジには大きめのソファを置いている。待ち時間の少ない患者さんには回廊に配置したカッシーナのブーメランチェアに、遠方から来られた大腸検査目的の方には、ラウンジでゆったりとソファに座ってもらって前処置を行っている。
開院して7年、院内の設備調度品を年々少しずつ増やすとともに、機会がある度に変化させてきた。本業の内視鏡機器は最新のものを導入するようにしており、システムは2代目に入って早2年が過ぎた。内視鏡中心のクリニックのため年単位で受診される患者さんが多く、久しぶりに来院された方から「以前の画像より一層キレイになりましたね。」、「以前よりさらに落ち着いた雰囲気になりましたね。」とよく声をかけられる。
設備等のハード面だけではなく、ソフト(運用)面でも常に変化し続けている。お陰様で年々増えていく内視鏡検査を、如何にすればスムースにストレス無くサティスファクション(満足)が得られるか、スタッフともども常に考えている。今年になってからも、内視鏡検査の順番に少し工夫を凝らしたところ、終業時間に改善傾向が見られるようになった。
下痢に便秘、腹部不快感や血便、胃同様大腸内視鏡検査は患者ニーズの高い検査である。一方、前処置はもちろんのこと検査自体も大変であることは周知の事実である。しかも、基幹病院では1ヶ月以上も予約待ちの状態だそうだ。開院当初から「待たせず、極力苦痛のない検査を」と取り組んできた結果、開院1年目は360件ほどしかなかった検査が、今年は1000件を超えるまでになった。当初1本だったスコープも、現在は3本で対応している。
胃と異なり、大腸検査時には原則鎮静剤を使用してこなかった。眠っていると患者さんの体位変換が出来なくなる。体位変換は、スムースな挿入のための重要な因子である。医者側も、患者さんの痛みに対する閾値が低くなるため安易な挿入法に頼りがちになる。何よりも、事前に同意を得ているとはいえ、意識がないままの日帰り手術は医学上も法律上も危険である。
しかし、増える検査数とともに患者さんの「より検査を楽に。」の声も多くなった。試行錯誤の末、会話・体位変換ともに出来てかつ意識がやや低下している鎮静剤の量が決定した。昨年春頃から鎮静剤を用いた大腸内視鏡検査を導入したところ、患者さんの評判は上々である。
進化し続けることは、組織の停滞沈滞を招かず活性化するという意味では重要である。しかし、残念ながらスタッフもそれ以上に進化し続けている。開院当初からのスタッフは一人だけになってしまった。諸事情があるにせよ、院長の不徳のいたすところである。経営者や店長と話をすると、皆一様に人を雇うことの難しさを痛感しているようだ。医療に専念したいところだが、自分自身の名を冠したクリニックだからある意味自身の分身である。微に入り細に入り気になることが多く、スタッフへの要求もどうしても高くなる。クリニックの総合管理は心身ともに辛いが、社会勉強という点では大変いい勉強をさせてもらっているとも感じている。こちらは、定着化を祈るばかりである。