院長のコラム

集大成の時

開業して十三年になる。長くもありあっという間のようにも感じる。自分自身は何ら変わっていないと思っている。いやむしろ、健康に留意するようになり体力や体型は進化したように錯覚している。反面、学問に対する探究心は衰え、老眼がかなり進んだことも事実である。自身の変化は些細なものだが、小学生だった子供達が大学生になっている事実を顧みれば確実に時は経っている。

自身の微妙な変化と異なり、クリニック周辺の環境は随分と変わりつつある。二十年ほど前、周りに人家がなく道路から一本入った資材置き場だった広い土地を父から譲り受けた。「この周辺の土地はこれから発展して行きます。そのうち高く売れますよ。」仲介役の会計士の言葉と裏腹に、買い手はもちろん借り手さえつかなかった。しばらく、固定資産税を払い続けるだけの年月が続いた。開業を決意した時、この地を担保に借り入れを考えた。とは言え、何かの縁で巡り合ったある意味約束の地である。開業には不利で不向きな土地であったが、「クリニックを建てることにより環境を変えることが出来る。」発想を転換することにした。「広大な土地を逆手に取って有効利用出来る。」根拠のない確信もあった。開業から八年後の平成二十七年六月、広い土地の奥に鎮座するかのようにサービス付き高齢者向け住宅「ポータラカ」と介護事業所「カノン」が完成した。

介護事業は当初、苦戦を強いられた。けれども、クリニック横に併設された高齢者向け住宅という安心感が徐々に浸透し、かなり時間を要したがどうにか満室になった。そうなれば、何かと細かな支障が出てき始め、施設自体も手狭になってきた。広大だった土地も残すは一区画のみである。数年前から施設長でもある妻と、千葉学建築計画事務所の協力のもと、サ高住の増室を含めた今後の方向性を様々にシミュレーションしてきた。その結果、ポータラカ内のデイサービスを閉鎖し居宅を三室増室すること、新たに外部にデイサービスを拡充併設することにした。この九月に着工し、つい先日ささやかながら無事上棟式を迎えることが出来た。完成は来年二月、正式な運用は四月を見込んでいる。現在工事中のため、患者さんや入居者の家族に迷惑をかけないよう、クリニック下にある土地を職員用駐車場として借りている。

第一期はクリニックと門前薬局、第二期は介護事業所およびサ高住、第三期はデイサービス、足掛け十三年、ようやくこの地が完成する時が来た。それは即ち、僕の医療人としての集大成でもある。それは千葉事務所にとっても同様で、医療と介護に視点を置いた建築群の総仕上げとなる。低予算の中、介護施設スタッフからの細かな要求に応え、周囲の建物と調和するよう意匠にも苦心していただいた。たかが十三年されど十三年、ひょんなことから父親から譲り受けた資材置き場が、モダン建築の集合の場になる。高齢化が急速に進んだこの日本における医療と介護への僕からの提言でもある。まだまだ頑張らなければならない。

長嶋雄一クリニックお問い合わせ

診療科目(内科・消化器科・胃腸科)
診察週

月・火

木・金
奇数週
(第1・3・5週)
8:00 ~ 16:00 8:00 ~ 16:00 8:00 ~ 15:00
偶数週
(第2・4週)
8:00 ~ 12:00
休診日︓第1・3・5週水曜日、第2・4週土曜日/ 祝・日曜日