飛ぶ鳥を落とす勢いのヨウジ(1)
シュプリームというファッションブランドがある。スケートボード文化やヒッピホップ音楽に影響を受けた、いわゆるストリートファッション系のブランドのようである。名前やブランドロゴは知っていたが、シュプリームの影響の大きさを実感したのはルイヴィトンとのコラボの時であった。発売初日に一万人の行列が出来たとか、あまりの希望者の多さに抽選による入場方式になったこと、その倍率は三十倍だったことや入場券に数十万円のプレミアがついたことなどがネットニュースで話題になった。今秋、そのシュプリームがヨウジヤマモトと協業する情報が入ってきた。早速、ヨウジのショップスタッフに問い合わせたところ、今回の商品はシュプリーム主導でヨウジ社のショップでは販売しないとのこと。ならばと、シュプリームのショップに問い合わせてみた。遠方なので電話注文出来ないか尋ねたところ、オンラインショップでも販売するとのこと。当日、PCに向かってみたが惨敗だった。おそらく数分で完売したのではなかろうか。案の定、プレミアム価格でネット販売されている。定価以上の金額を払うつもりは毛頭ない。したがって、購入できなかったことに後悔は全く無い。
今、最も勢いのある高級腕時計ブランドと言えばウブロだろう。水曜日の午後、モスバーガーで見る雑誌「LEON」には、ウブロの時計がいつも多数取り上げられている。勢いがあることそれは即ち、莫大な広告費を支払うことなのだ。個人的に、現状のウブロに対して既視感がある。どうしても、かつてのフランクミュラーを思い出すのだ。長年の夢を叶えてフランクミュラーを購入した時は、万感の思いだった。憧れのブランドを購入できた喜び、そして購入できるような身分になった自分への誇り。しかし、現在はどうだろう。フランクの当時の勢いは何処へ、なぜ僕はフランクミュラーの購入にこだわったのか説明がつかない。同じ金額を出すのなら、もう少し頑張っていわゆる雲上ブランドを購入しておけばよかった、少し後悔している。したがって、ウブロに対しても同様の見解をいだいていて、付き合いのある時計店が正規代理店として扱うようになっても全く興味がなかった。
そのウブロが何と、ヨウジヤマモトとコラボすることになった。今春、身に覚えのないDMが突如ウブロから送付されてきた。ヨウジヤマモト青山本店の顧客限定ということで、ウブロブティック銀座のオープンを記念して「ビッグバンGMTオールブラックヨウジヤマモト」が限定五十本発売されるとの内容だった。ウブロと言えばLVMHグループの一員である。LVMHとは言わずもがなのルイヴィトンとモエヘネシー社が合併したコングロマリットである。その傘下には名だたるファッションブランドが連なっている。にも関わらず、アジアの島国の独立系ファッションブランドとコラボレーションをするというのだ。ウブロが山本耀司氏に敬意を払ってくれたことに対して、長年のヨウジファンとしては素直に喜びたい。とはいえ、時計を購入するかどうかは別問題である。写真を見た印象は、真っ黒にした以上のオリジナリティを感じなかった。価格は、もちろんそれなりである。緊急事態宣言の最中、上京するなんて不可能である。時計店の担当者やヨウジのショップスタッフに聞いても反応が薄い。何よりも、自身がウブロに対して偏見を持っておりスルーすることにした。