飛ぶ鳥を落とす勢いのヨウジ(2)
ウブロxヨウジコラボ時計の発表から四ヶ月経過した今秋、突如として第二弾が発表された。今度のモデルは「ビッグ・バン カモ ヨウジヤマモト」というモデルである。カモという名称は、カモフラージュモチーフをダイアルとラバーストラップに用いていることに起因している。「おっ、これは前回よりヨウジらしいな。」、時計店の担当者に問い合わせたところ、「ブティック(直営店)先行発売なので当店で扱えるかどうか分かりませんが、これは結構、いやかなりいいですよ。」との返答。とは言え、高級軽自動車が買える値段である。「それなら、ロレックスが二本買えるな。」、最近どうも換金率という概念が身に染み付いている。そうこうしているうちに、何と第三弾「ビッグ・バン オールブラック カモ ヨウジヤマモト」が十一月六日からブティック先行で発売されるようだ。ここまで来ると、「何が起こってるんや?どういうこっちゃ。」と訝しんでしまう。第一弾が銀座ブティック限定五十本、第二弾が全世界限定二百本、第三弾が日本限定百本だそうだ。三十年来のヨウジファンの沽券に関わる問題である。迷い始めた、今日この頃である。
ランボルギーニと言えば、フェラーリと並び称されるイタリアの高級スポーツカーメーカーである。アウトモビリ・ランボルギーニから、今秋ヨウジヤマモトとのコラボレーション作品を発表することが伝えられた。手前味噌になるが、そのニュースを知った時、「えっ、ランボルギーニとヨウジって、それ俺やん!」思わず心の中で喝采を上げた。以前のコラムでも書いたように、昨秋、大阪で開催されたランボルギーニ・デイに参加した。そのレセプションの最中、ランボルギーニ社の関係者と思われる欧米人から一緒に写真を撮らせて欲しいと依頼された。「あんた(の服)は、かっこいい。」「ヨウジヤマモトだからさ。」こんな会話をしながら、数人の関係者と一緒に写真を撮った。こんなことがあったので、今回のコラボレーションの話を聞いた時、「ひょっとして俺が仲介役?」と安直にも思った。なので、ヨウジ本社の知人に問い合わせてみた。「具体的な話は言えませんが、一年半前くらいから進行していた話なんですよ。ところで、長嶋さんがランボルギーニに乗っていることの方がびっくりです。」とライン返信があった。「ああ、やっぱりな。」、大いなる勘違い、激しい思い込みとはこのことである。十月二十九日、「アヴェンタドール S “dressed” by Yohji Yamamoto」が公開された。おそらくワンオフモデルなので通常の倍近い金額になるかと思うが、もう売却先が決まっているようだ。端から買うつもりもなければ到底買えるものでもないので、長年のヨウジファンとしては、コラボアパレルくらいは購入しようと考えている。
自身のヨウジ歴は、かれこれ三十数年になる。このブランドの紆余曲折、栄枯盛衰を長年見てきた者にとって、2020年は感慨深い年になった。ファッション、ウオッチ、車、何れも欧米が先進であると考えられている分野で、アジアの独立系ブランドがフィーチャリングされるのは、燿司さんの独創性、普遍性、職人気質がファッション以外の分野でも世界的に認知、評価されたことになる。我が事ながらに嬉しい。その燿司さんも今年で御年七十七だそうだ。高齢化率世界一位、OECD加盟国で認知症有病率最多を誇る我が国であるが、「老いては益々壮んなるべし」耀司さんに見倣う点は生き方以外にも健康面でも多々ある。アヴェンタドールは絶対買えないが、ウブロにココロ揺れている。